第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 30 - 認める
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 30 - 認める
俺がカナエに気付いたように、カナエも俺のことに気付いたらしく、まったく遠慮なしの敵意剥き出しの視線を送ってきた。
そのまま俺のことを無視するかと思ったのだが、カナエはそういうことができないタイプらしく、つかつかと俺の方に向かって歩いてくる。
カナエは俺の正面の向かい合う位置で立ち止まった。
そして、俺に右手を差し出してくる。
「認めてやるよ、あんたらの実力。ぶっちゃけ舐めてた。ここまでいい試合になるなんて思ってなかったよ」
俺はカナエの右手を握り返しながら、カナエに答える。
もちろん、相手が返事を求めていたわけでないことは承知の上でだ。
「はっきり言って、最初に虹色スーパームーンと戦えることができたのは、はちみつパンプキωにとって僥倖だった。勝つにせよ負けるにせよ、今の実力以上の力をぶつけられる相手は他にはいないからな」
俺の言葉を相手がどう受け止めるかは分からないが、あえて言っておく。それこそ、どちらが勝っても、もう会える機会は失われるからだ。
「ふん、そのセリフは勝った時までとっとくんだな。マスター・オブ・クイーン・コンテストに出る以上、クイーンをとらなきゃなんの意味もない。うちらは、そうやってここまで登ってきたんだ」
試合が終わっても、カナエのギラギラとした闘争心はまるで収まってはいなかった。
「そうだな、君たちの言うことは正しいよ」
俺は全面的に肯定する。
もちろん俺には俺の見識があるが、それがあるからと言ってカナエの生き方を否定するような話にはならない。
「ちっ、相変わらずやりにくい相手だよ、あんたは。まぁいい、結果はすぐにでる。どっちが勝とうが、どのみち次の大会じゃまた闘うことになるんだ。これで終わりなんて思うんじゃないよ」
きっぱりと、カナエが言い切った。
おそらくこれは、彼女なりのライバル宣言なのだろう。
もっとも、試合結果がどうあれ、はちみつパンプキωが次の大会に出場することはありえない。
今回のマスター・オブ・クイーン・コンテストが終われば俺は事務所関連すべての権限をカージに譲るつもりだ。
小島、シリン、レヴンの三人は引退させるつもりだ。もちろん俺の暮らしを守るために。
当然、はちみつパンプキωは自動的に解散することになる。
つまり、次のマスター・オブ・クイーン・コンテストに出場するのは別のユニットである。




