第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 27 - 虹色スーパームーン
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 27 - 虹色スーパームーン
実際には最初からそうだったのだが、間合いが遠すぎたために見ている者が気付かなかったのである。
その規則とは、センターであるカナエを中心とした点対称性。
どうしてそれに気付いたのかと言うと、それは舞台いっぱいに広がっていたメンバーが、中央にどんどん近づいてきたからだ。
それで、それまでの間気付かなかった規則性に観客達が気付き始める。
曲の終わりの方に近付くと、メンバーの隊形が円から線に変った。
その瞬間、それまで歌っているだけだったカナエもダンスに加わる。
ボーカルもカナエだけでなく、他のメンバーも加わり独唱から合唱へと変った。
これによってカナエへの負担が減って、全員が動けるようになったわけだ。
最初はカナエだけ動きが違ったダンスをしていたのだが、一人一人カナエと同じ振り付けになり、最後は全員の動きがシンクロする。
そこで、曲が終了する。
もっと見てみたいと思わせるタイミングでのパフォーマンスの終了。
予想以上に見せてくれるパフォーマンスであった。
一つの試合に演目は一つだけなので、虹色スーパームーンの出番はこれで終わりとなる。
虹色スーパームーンのメンバー全員が舞台を降りると、いよいよ次は、はちみつパンプキωの登場である。
もちろん、観客の中にパフォーマンスを見たことのある者など、俺たち関係者以外にはいないだろう。
当然誰一人として、期待している者もいない。
最低レベルの期待度は、ある意味チャンスであった。
ここで、持てる力以上のパフォーマンスを見せることができれば、奇跡に一歩近づける。
とは言え、俺は彼女らがどんな演目をやるのか知らない。
プロデューサーとして名前を貸してはいるが、最初から俺がやっているのは主に資金提供とトラブルが発生した場合の対処のみであり、はちみつパンプキωの具体的な活動に口出ししたことはない。
練習の見学くらいはしたことがあるが、せいぜいそのくらいだ。
カージやリミィからの報告を受けても、それがトラブルや資金の追加要請でもない限り基本的になにもしない。
もちろんそれは、意図的にやっているのであって、俺がハブられているとかいうわけではない。
そもそも素人の俺が余計な口出しをすれば、それがなんであれ足を引っ張ることにしかならないということくらいは簡単に理解できることだ。
なので、これから、はちみつパンプキωがやろうとしている演目のことを俺は知らない。




