第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 26 - トーナメント一回戦
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 26 - トーナメント一回戦
「おいおいマジかよ」
そんな声をあげているのは斉藤であった。一足先に、俺と同じものを見ていたのだ。
それはたった今決まったばかりのトーナメント表。
その第一試合目の組み合わせである。
もちろん一組目の対戦者は今からパフォーマンスを披露しようとしている虹色スーパームーン。問題なのはその対戦相手である。なんと、はちみつパンプキンωが第一試合目の対戦相手であった。
確率的にトップバッターとなる可能性は考慮していたかもしれないが、その対戦相手が優勝候補の一翼ともなると、それをどこまで想定していたかまではわからない。
正直な話し、はちみつパンプキωは今初戦にしていきなりピンチに立たされている。
ロールプレンイングゲームで言うところの、冒険に旅立ったばかりのレベル1の勇者がいきなり中ボスと出くわした的なノリである。
はっきり言って、勝ち目は極めて少なかった。
常識的に考えれば、の話しである。
俺の考えは少し違う。
ワルキューレ☆ハートのパフォーマンスを実際この目で見た後ではなおさらだ。
アレを超えるためには、この程度の試練など跳ね返せるようでなくては話にならない。
そう考えれば、クイーンの座をワルキューレ☆ハートからもぎ取ろうとしている、はちみつパンプキωにとってこれは願ってもない展開と言える。
圧倒的に経験値の少ない、はちみつパンプキωにとって、強い対戦相手との闘いはどうしても必要なことであった。
さて、舞台上では準備の終わった虹色スーパームーンの演目が始まろうとしている。
今は彼女達のパフォーマンスを見ることに集中しよう。
ライトが虹色スーパームーンの全員に当たる。
彼女たちは、横一列に並んでいた。
ポップな曲が流れ始めると、全員が一斉に動き始める。
全員がそれぞれに、好き勝手に動いているように見えた。
舞台のあらゆる方向に踊りながら散っていって、中央に一人だけ残る。
中央の一人だけは踊らず、その場で歌い始める。
コンソールに名前が表示されたが、さすがにそれを見なくても分かる。俺に対して挑戦的な態度で話しかけてきたアイドル、カナエであった。
さすがに言うだけのことはあって、ワルキューレ☆ハートのメンバーと遜色のない歌声であった。
彼女の歌声が曲に乗ってきたタイミングで、他のメンバーの動きが変わる。
それまでバラバラに見えていた動きに、規則性が見え始める。




