第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 24 - エキシビジョン
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 24 - エキシビジョン
そして、頭の中に流れている美しい旋律を吹き飛ばすように、派手な音楽がドームの中に響き渡った。
その瞬間、今度は舞台全体をライトが照らす。
舞台には全34組全員のアイドルユニットが揃って、観客席に向かって手を振っている。
今のは開会式用のエキシビジョンであった。
それと同時に、なぜワルキューレ☆ハートがクイーンであるのかを見せつけた舞台でもあった。
メンバー五人全員がセンターを張れるというのは、こういうことなのだ。
もちろん今のはワルキューレ☆ハートにしてみれば、ほんの余興にすぎないのだろうが、それでも観客は度肝を抜かれたことだろう。
もちろん俺も含めて。
横を見ると、斉藤が口を半開きにして固まっている。
その向こうではカージが苦笑を浮かべていた。
改めてラスボスの巨大さを思い知ったという所だろう。
斉藤がギギギっと音をたてそうなロボット的動きで俺の方を見る。
「なぁ、お前なんで笑ってんだ?」
そんなことを聞いてきた。
汗を流していることには気づいたが、笑っていることにはまったく気づかなかった。
俺は手を顔に当てて確認してみる。
すると、確かに俺は笑ってるようだ。
「そうか、笑っているのか俺は」
俺は今日二度目のセリフを口にした。
今まで気づかなかったが、どうやら強敵を前にすると笑う癖があるようだ。
気をつけた方がいいかも知れない。
もっとも、近くに斉藤がいなけりゃ気づきようがない話しだが。
さて、舞台の上では次のステージに進んでいた。
舞台上に開会の宣言をした司会者が上がってくる。
人間の男かと思っていたが、拡大した映像から見るにどうやらエルフのようだった。
もっとも、このドーム内にそんなことを気にしている観客は一人もいないだろうが。
司会者が上がってくるのと入れ替わるように、全アイドルユニットのメンバーが、センターの一人を残して次々と壇上から去っていく。
最後の一人が降りたところで、司会者が話し始める。
「それでは、今から決勝トーナメントの対戦相手を決める抽選を行います。ただし、シード枠のまんまるメロンは二回戦からの出場となるため、他のチームが抽選を行った結果自動的に対戦相手が決まります。そして、前回のクイーンであるワルキューレ☆ハートは、トーナメントで勝ち残った相手との対戦となるため抽選には参加いたしません。どうぞ、ご了承ください」
ワルキューレ☆ハートは決勝戦一回しか戦わないことになるが、誰からも文句は出ない。




