第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 22 - 開幕
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 22 - 開幕
「ようこそ、十三万千七十二の世界からお越しのお客様! 長く続いてきたアイドル達の闘いに、本日ついに終止符が打たれようとしています! この舞台に立つことの出来るアイドルユニットは、わずか34組。それだけでも、すでにトップアイドルと言っても過言ではありません。そんなトップアイドルの中から、真のクイーンを選び出すのはあなた方。そう、まさしくあなた方の手によってクイーンは生み出されるのです。そして、クイーン候補を紹介いたしましょう!」
ここで、演出が瞬時に切り替わる。
それまで中央のみに集中していたスポットライトが消え、舞台外周部を照らし出す。
それだけではない、舞台上方の空間に魔法投影機によって、舞台の様子が拡大投影される。
映し出された映像の中に、33組のアイドルユニットが、それぞれの舞台の外側を向いて立っている姿があった。
当然その中には、はちみつパンプキωも含まれる。
流れ出すミュージックと共に、それぞれのアイドルユニットが曲に合わせて踊りだす。
この曲は事前に事務局から渡されたものであるが、振り付けは各ユニットが独自に練習してきたものだ。
派手なもの、アクロバティックなもの、可愛らしいもの、それぞれのアイドルユニットの特徴を活かしたダンスであった。
一斉に踊る瞬間は開幕のこの瞬間しかないこともあり、会場全体が一気に沸き立つ。
実に豪華で贅沢な催しであった。
だがこの時、誰もが等しく疑問に思っていたはずだ。
決勝トーナメントに出場するアイドルユニットは全部で34組。1組少ないということに。
そして、その少ない1組がどのユニットなのかも、すぐに分かるはず。
なにしろ、頂点を構成するアイドルユニットの中でも、圧倒的な輝ける存在である、前回マスター・オブ・クイーン・コンテストの覇者。ワルキューレ☆ハートの姿がないということに。
その疑問が観客の中で最高潮に達したとき、外周部のライトが消えて、中央部を照らすライトへと切り替わる。
その瞬間、曲が変った。
それまでの派手で華々しいそれから、おだやかでたゆたうような曲に。
その曲に合わせて姿を現したのは、ワルキューレ☆ハートであった。
メンバーは全部で五人。そのうちの四人が、まるでクラシック・バレエのように舞う中で、中央に立つ一人がゆっくりと前に進みながら歌い始める。
会場全体に広がる歌声は、この一瞬で観客全員の心を魅了した。




