第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 20 - コンソール
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 20 - コンソール
なにしろ、今日この会場に集った者達は、人間以外にもエルフやドワーフ、中にはトロールもいる。
コンソールはすべての言語に対応している上に、文字だけでなく個人結界を利用して音声ガイダンスにも対応できる仕組みにもなっている。
それらすべてが、アイドルユニットのパフォーマンスに最大限没入することが出来るようにと配慮されたことであった。
もちろんそうすることで、より正確な観客の反応を収集できることは言うまでもない。
もちろんこの辺りの情報は、今おれの目の前に展開されているガイダンスによって得られたものである。
ここからは俺の見解となるが、これらの端末が必要なのはこの会場にくる客層の殆どが、いわゆるアイドルヲタクとは異なっているという理由も大きいだろう。
一般人はそれほどアイドルに詳しいわけではない。
もちろん、そんなことをガイダンスに載せれば、それこそヲタク差別となってしまうので載せられないのだろうが。
なんにしても、必要な情報は目の前に自動的に表示されて、もっと詳しく知りたければ簡単な操作で詳細情報を表示させることができる。
ちなみに今目の前に表示されているのは全て日本語表記で、開会式が始まるまでのカウントダウンが行われていた。
一般客の客席を見てみると、ちらほら空席があるものの殆どの客は自分の席についている。
トイレやあるいは売店での飲み物お菓子の類を購入するなり、用を済ませた者達は急いで席に戻ってくるはずだ。
もうまもなく開会式が始まると館内放送で呼びかけが始った。
ドーム内の観客全員が、期待に鼓動を高鳴らせている音が聞こえて来そうだ。
俺の座っている席のコンソールに、着信の表示があった。
応答すると、コンソールの端に相手の姿が映る。
ミリィであった。
「ナルセ、ちゃんと席についてるみたいだね」
一体なんの心配をしてるのか聞き返したいところだが、ミリィの周囲に漂う緊迫した空気を感じてやめておく。
「それより、そっちはどんな感じだ?」
俺は軽く流して聞いてみる。
「もちろん、こっちの準備は万端だよ。こいつらもいい顔になってやがる、見るか?」
ミリィが言い終わらないうちに、サリィが割り込んでくる。
「サリィ、ナルセのためにがんばるからねっ。ずっと見ててね」
そのセリフが最後まで終わらないうちに、今度はイチリアが割り込んでくる。
「なっるせー、イッちゃんだよっ」




