第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 15 - チャレンジャー
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 15 - チャレンジャー
俺が茶化すように言ってやると。
「くっ。そんなことを言うなら、舞台の上でねじ伏せてやるよ。格の違いってやつを見せてやる。せいぜいザコにやられないように、ザコ以下のメンバーを躾けておくんだな」
捨て台詞のような言葉を残して、カナエは去って行った。
予想以上に良好な反応に、俺は嬉しくなる。
「おいおい、何笑ってんだよ?」
横で今のやり取りを見ていた斉藤が、俺の顔を覗き込むように見て言ってくる。
「俺、今笑ってたのか?」
まったく意識してなかった俺は、不意をつかれたような気がして思わず聞き返してしまう。
「ああ、笑ってたぞ。あんな風に、強豪ユニットのセンターを焚き付けて、よく笑ってられんな」
呆れたように斉藤が言ってくる。
「そうか、俺笑ってたのか」
俺は自分の顔に手を当ててなでてみると、確かに口の端が釣り上がり気味になっている。
やはり笑っているのだ、俺は。
「一人で勝手に納得すんなよ。それで、どうすんだよ?」
斉藤は結構気にしているようだ。そんなことを聞いてくる。
「どうもしないさ。俺が闘うわけじゃないしな。それに、たぶんだが、本気以上の力を出した虹色スーパームーンに勝てないようでは、ワルキューレ☆ハートと対等に闘うことはできない。そんな気がするよ」
正直言って、未だにアイドルのことをよく知っているわけではない。
だが、かつてハイパーインフレ的な闘いにつぐ闘いを繰り広げていた俺の経験上、ある程度実力を推し量ることはできる。
それからすると、ユイから感じたあの感覚は、明らかに他とは物が違った。
俺が言ったことは、けして的外れではないはずである。
「だけどな、それじゃ決勝まで行く前に負ける可能性が高くなるんじゃねぇのか?」
斉藤は、当然の心配をしてくる。
「ああ、決勝まで勝ち進むのが目的なら無難な道を選んだほうが賢い選択ってやつだろうな。だが、クイーンの座を掴むならそれじゃダメだな。無難なやり方をやっていたら、ワルキューレ☆ハートは倒せない」
俺は、今度はきっぱりと言い切った。
「まぁ、そりゃそうか。ヲタの俺から見ても、はちみつパンプキωは成長したよ。けど、今の実力はワルキューレ☆ハートには遠く及ばねぇレベルだ。確かに普通にやってたんじゃ、絶対に勝てねぇな」




