第02話 VSヴァンパイア!-17 - ヴァンパイア戦4
俺は正面から突くように繰り出された右足の蹴りを避けずに受け止める。フェーズ1に落としたために消滅することは無くなったが、それでも力の差は圧倒的である。ナルシス・ヴァンパイアからしてみれば、けして砕けることのない壁に向かって蹴りを放ったようなものだ。反動で自分の体が後ろに飛んでいきそうになる。もちろん、俺はそんなことなどさせない。足首を掴んで固定する。すると、ナルシス・ヴァンパイアは体を後ろに持っていかれながらも、反対側の左足で蹴りを入れてくる。
なかなかいい反応だと思ったが、まったく気の込められていない蹴りではまるで役にたたない。俺は、その蹴りを無視して握った右足を持ち、ハエたたきの要領でナルシス・ヴァンパイアの体を床に叩きつける。
派手な音がした後、ナルシス・ヴァンパイアがうめき声を上げた。
さすがはアンデッドの親玉である、このくらいでは死なないようだ。もっとも、死んだにしても復活してくるのだろうが。
なんにしても、これで安全?が確認された俺は、同じことをどんどんと繰り返す。ナルシス・ヴァンパイアが床に叩きつけられる音と、うめき声だけが辺りに響いている。同じことの繰り返しに、俺がいささか飽きてきた頃、ナルシス・ヴァンパイアの声はうめき声からすすり泣く声へと代わってきたような気がする。俺は、はっきりと核心が持てるようになるなるまで繰り返すと、最期に一回だけ叩きつけた後、ようやくナルシス・ヴァンパイアの右足を開放する。
開放されたナルシス・ヴァンパイアは、もう俺に向かってきたりせずに、その場に倒れたまま大声でおんおんと声を上げて泣き始めた。
「○▽※□◇*……」
何か言っているようではあるのだが、ボリュームが大きすぎてさっぱりわからない。
さすがに、この展開は予想できなかったので、俺は心の底から引いてしまう。
なんなんだ、こいつわ……。
しかし、はじめはボリューム高すぎて、何を言っているのかわからなかったナルシス・ヴァンパイアの言葉も、ほどなく理解できるようになった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃぃ!!!」




