第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 08 - 会場
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 08 - 会場
上空からみるとその巨大ドームの周囲には、すでに大量のファンが詰めかけていて、人の波のようになっていた。
もちろん、人間以外の種族も多数いるが、ヒューマノイドタイプの種族ということで共通している。
ようするに、アイドルという概念を共有できる種族ということである。
もちろん地上だけでなく、空からもシティ・ドームを目指してやってくる連中も多い。
なので今日は地上だけでなく、上空にも警官が配置されていて俺のように自力飛んでくる客の交通整理をやっていた。
本来ならば俺もそれに従わないといけないのだが、関係者パスを持っているので優先的に通される。
スタッフ専用の出入り口の前に降りると、すぐに選手として出場するアイドルのために用意された控室に向かう。
途中他のユニットのアイドル達とすれ違った。
全員服装もタイプも種族もばらばらだったが、完全に共通していることがあった。
それは、サリィの姿を見ると全員が一様に敵意をむき出しにした視線を送ってくるということである。
想像はしていたことだが、完全にアウェイ状態になっているみたいだ。
それはサリィも感じているのだろう、他のアイドルとは一切視線を合わそうとはせずにまっすぐ前を向いて歩いてゆく。
そのまま、はちみつパンプキωと書かれたプレートが取り付けられた選手控室に入ると誰もいなかった。どうやら早く到着しすぎたらしい。
「ふぅ。だいじょうぶ、だいじょうぶ。いける、いける」
控室に入ると、サリィは自分に言い聞かせるようにそんな言葉を口にした。
実際に現場の空気に触れて、さらに緊張が高まってきたのだろう。
俺がいるとしても、選手でもなければメンバーでもない。
結局の所、共有できるものには限界がある。
なので一人でなんとか自分を盛り上げようとしているのが今のサリィであった。
だがそういったことも、長い時間ではなかった。
控室のドアが空き、最初にリミィが部屋の中に入ってくる。
「おいっす! 早かったな!」
俺とサリィの姿を見てリミィが声を掛けてくる。
「あれっ? サリィちゃんいるよ? なんでなんで?」
次に入ってきたのは小島だ。
「主様が連れて来られたからに決まっているでしょう」
次に入ってきたのはレヴンだった。
「サリィ、いい顔になってるじゃないか」
レヴンとほぼ同時に入ってきてサリィの表情を見たアイカが楽しそうに言った。
「ちっ。あんま迷惑かけんじゃねぇよ」




