第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 07 - 勇気
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 07 - 勇気
結果など終わって見なければわからない。可能性なんて言葉は結果が出てしまえば無意味なものになる。だが、可能性はチャレンジするものにのみ与えられる物である。サリィには……そしてはちみつパンプキωには可能性が与えられた。その可能性を掴むのかそれとも手放すのか……今、サリィはその選択をしなくてはならない。
もちろん俺は、そこまで話すつもりはなかった。
話さずとも、その程度のことはサリィだとて分かっている。
サリィが今必要とするものは、もっと別にあるのだろうと俺は思っている。
そしてそれは、サリィが自分自身の力で手に入れなくてはならない物であった。
それと大切なことは、サリィはそれをすでに手にしている。
ただ、自分でそれに気づいていないだけのことだ。
「あたし、たち……。そう、あたしたちなのよね。馬鹿だな、あたし。夢を見ているのあたしだけじゃないのに。あたしは一人じゃないのに。怖くなって一人で震えて、バカみたいだよね」
まだサリィの体は震えている。
だけど、どうやら気づいたようだ。
はちみつパンプキωは六人そろって初めて一つのユニットなのだということに。
俺は声をかけずに、サリィが結論を出すまで黙って待っている。
実際、それほど時間はかからなかった。
「ナルセ、ごめん。遅れちゃったけど、わがままだけど、あたしを会場まで連れていって」
そう頼んできたサリィの体は、やっぱり震えたままだった。
それでも、もう迷うことなくはっきりと言う。
本当は俺が言わずとも、サリィは最初から持っているのだ。勇気というやつを。
さすがに口に出して言うようなことではないので、このことに関してはこのまま封印するつもりだ。
俺の方は口にする勇気がないからだ。
「もちろん。俺はそのために残っている」
俺は、両手でサリィの小さな体を抱えて立ち上がる。
ちっちゃいから軽いだろうと予想してはいたが、サリィの体は俺が想像していたよりずっと軽かった。
「残ってラッキーって感じかな? へへっ」
サリィは俺の首に手を回して、ぎゅっと抱きついてくる。
どうやら、いつもの調子を取り戻したようである。
震えは相変わらず伝わってくるが、もう心配することはない。
サリィは強い。
俺はサリィを抱いて大会会場に向けて飛ぶ。
ルートワース・シィティの郊外にシティ・ドームと呼ばれる巨大ドームがある。よくある東京ドーム換算で十個分だ。




