第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 05 - 集合
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 05 - 集合
それから一時間後。ルートワースの事務所にはメンバー全員が揃っていた。
小島は斉藤と一緒に最後にやってきたが、時間内に間に合った。
「全員揃ったな。さぁ行くぞ」
カージが号令を掛けると、全員が動き出す。
だが、一人サリィだけが動かない。
「どうしたんだ?」
みんなと一緒に行こうとしていたリミィが戻って来てサリィに尋ねる。
だが、サリィは首を横にふるだけで答えようとしなかった。
「はぁ? あんたね、今日がどんな日かわかってんだろ? チンタラやってる暇はないんだ、引きずってでもつれてくよ?」
サリィの態度に、半ばキレかけたリミィが強圧的な態度に出ようとする。
だが、大人の心に幼女の体のリミィではそんなことなど出来るわけがない。
いくらサリィがメンバーで一番ちっちゃいからと言っても、リミィに比べたら頭一つ分はでかいからだ。
「リミィ。貴方は他のメンバーと一緒に行って。サリィは自分が責任を持って会場まで連れていきますよ」
俺はエキサイトするリミィをなだめるように言った。
俺としても気持ちは分からないではないが、だからと言って無理やり連れて行ってもろくな事にはならないだろう。
それに俺が残れば、ギリギリの時間であっても、余裕で会場まで運ぶことが可能だった。
「うーん。そうか……しかたない、この場はたのむよ。かならず連れてきて」
迷っていたようだが、他にいい案が思い浮かばなかったらしく、リミィは俺の提案を受け入れた。
リミィが集合場所であるトレーニングルームからいなくなると、本当に俺とサリィの二人だけになる。
俺はサリィに近づくと、何も言わずにちっちゃなサリィの頭の上に手を乗せてみる。
するとサリィは嫌だったらしく、頭をふるふるして手をどけようとした。
もちろんそのくらいのことでは、俺の手はサリィの頭の上に置かれたままだ。
次にサリィは手を使って俺の手を振り払おうとした。
俺は特に逆らわずに一旦はどけるが、すぐに頭の上に手を戻す。
この作業を何度か繰り返すと、ついに耐えきれなくなったサリィが叫ぶ。
「もぅ、いい加減にしてください! あたしのことなんて、ほっといてください!」
何かを思いっきり吐き出すように、ちっちゃなサリィからは想像できないような大きな声だった。




