第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 01 - 決勝の朝
第07話 異世界アイドル選手権 後編 - 01 - 決勝の朝
その日の予定は朝から空けていた。
ずっと以前から決まっていた予定である。
たまたまではあるが、丁度夏休みに入っており、予定を確保することはそれほど難しくはなかった。
前日の夜、シリンは中々寝付けなかったらしく家の中を一人でウロウロとしていたようだ。
レヴンは勝手に部屋に入ってきて、俺に張り付いたまま離れようとはしなかった。
絶対に認めようとはしなかったが、かなりの不安と緊張を感じていたようなので、無理にひっぺがさず好きなようにさせることにした。
もちろんレヴンは俺との間に子供を作るという野望を捨てていないことは承知しているが、今回だけは特例として大目に見ることにする。
おかげでレヴンは爆睡できたようだが、俺は暑くて眠れなかった。
小島のことも気になったが、斉藤がフォローに回ってくれるはずなのでそれほど心配はしていない。
リミィが心血を注いで鍛え上げ、カージが人生そのものを賭けてプロデュースした、はちみつパンプキンωは、俺が初めて見た頃のはちみつパンプキンωとはまったく別のアイドル・ユニットと言ってもいいくらいに進化していた。
だが、それでもまだ、決勝に出場する他のアイドル・ユニットのレベルには到達できていない。それが、カージとリミィ二人の共通した見解であった。
ただし、それは優勝を諦めているというわけではない。
正直、はちみつパンプキンωは極めて短期間に恐るべき進化を遂げた。
それと同じこと……いや、それ以上の進化を決勝の場でやってみせる。
普通に考えれば一笑に付されるのが当然の考え方だ。最初から奇跡ありきの戦いなのだから。
だがそれを言うなら、はちみつパンプキンωが決勝の舞台に立てること自体が奇跡のようなものだ。
たとえ褒められたようなものではない手段を使ったにしてもだ。
偶然と策謀と思惑が重なった結果、決勝トーナメントの舞台に立つことができた。
それも、よくよく考えてみれば奇跡の一種だろう。
数多いるアイドル・ユニットの中で予選を勝ち抜いて決勝トーナメントの舞台に立つことが出来るのはわずか33のユニット。それに主催者特別枠が一組加わって、計34のユニットで決勝トーナメントが行われることになる。
最後に決勝トーナメントの勝者が前回の優勝者、すなわちクイーンと対決して新たなクイーンが決定されるのだ。




