第07話 異世界アイドル選手権 中編 - 20 - アイドル
第07話 異世界アイドル選手権 中編 - 20 - アイドル
「それがね、十年前の話。魔法兵器開発プロジェクトで試作中の新型魔法コアが暴走して、近くで稼働していた魔鉱石濃縮炉と共振現象が起こったの。技術者と魔法学者が揃って共振を止めようとしたけど無駄だった。それまで蓄積していた全ての魔法エネルギーが開放されて、この星全体の生態系をすべて破壊してしまった。殆どの研究開発従事者は助かったけれど、最後まで暴走を止めようと残った魔法学者と技術者は全員が死亡した。このドームは一切の生命が存在できなくなった世界で、生存者の確認と暴走の原因を探るための拠点としてつくられたのよ。もちろんそれだけでなく、暴走した事実をなかったことにするために、すべての痕跡を抹消したのよ」
その話を聞いて、さすがに唖然とした。
ブラックな物件だということは承知していたが、さすがにこれは度が過ぎている。
おそらく裏にはルートワース政府が関与しているのだろう。さらに言えば政治家だ。
その隠蔽工作に、政府とのパイプを作りたかったリヴォーク社が加担した。
そう考えると、軍事企業であるリヴォーク社の買収を認めたのは、あまりに膿がたまりすぎたリヴォーク社を一旦精算してしまう目的があったのだろうという推論が成り立つ。
俺と魔界マドゥフの出現は、渡りに船だったというわけだ。
要するに企業洗浄に利用されたということである。
「それで、貴方とどう関係しているのですか?」
答えは想像できるが、俺はあえて聞いておく。
膿は出し切ったほうが後々楽になる。
「たぶん、もう分かってると思うけど。あたしは、魔法学者としてそのプロジェクトに参加していたの」
リミィはゆっくりとだが、それでもためらうことなく告白をした。
そして、話にはまだ続きがある。
「この体は、その時の影響。言い訳になるけど、あたしも残ろうとしたのよ。けれど、この体ではなにもできないだろうって、無理やりゲートに放り込まれたの。たくさんの口止め料を貰って、一旦は魔法学者をやめたわ。その頃だった。何も無くなってしまったあたしの前に、アイドルで覇権を取るって夢を語るプロデューサーが現れたのは。あたしには、他にやることもなかったし、その夢に付き合うことにしたわ。でも、いつしかその夢に、あたしもどっぷり浸かっていた。夢中になったわ。アイドルで覇権をとることが、自分の夢になっていたの。その夢の中で、共に夢見る人を好きになった。結局そのことが原因で、夢はやぶれちゃったけどね。だから、ここにはあたしの絶望があり、夢の出発点でもあるの。そういう場所なのよ」




