第07話 異世界アイドル選手権 中編 - 17 - 異世界へ
第07話 異世界アイドル選手権 中編 - 17 - 異世界へ
普通誰もが感じるであろう疑問を斉藤はそのまま口にした。
それを聞いたからと言って、どうなるものでもないのだが、一応言ってみなくては気が済まないのが斉藤である。
「しらん。それより、行くぞ」
俺は女神像に触れながら斉藤に告げる。
足元にさっき使った転送ゲートとは明らかに形状の異なったゲートが浮かび上がる。
それを見た斉藤があわててこっちに近づいてくる。
ゲートに斉藤が足を踏み入れた所で、俺もそれに続いた。軽い目眩と共に周囲の景色が変化する。
「あれれ? なんか違くないか?」
俺たちが立っているのは、木も草もない荒廃した山岳地帯である。
空を見上げても青くはなく、赤い空が広がっている。
「ああ、ここは別の世界だからな」
俺は軽く答えていたが、もちろんこれは違法行為である。
ゲートポート以外の場所での異世界間ゲート設置はルートワースの法律によって禁止されている。
「へぇ。それにしても、なんにもねぇけど、いったいウギッ!」
話の途中で一歩踏み出した斉藤が、何かに思いっきり顔をぶつけてその場にうずくまった。
「それから、歩く時は気をつけたほうがいいぞ。見えない壁があるから」
俺は斉藤に忠告してやる。
「おせぇよ……」
うずくまったまま斉藤が文句を言ったが、俺は痛くないので問題はない。
「魔法障壁だ。それのおかげで、水も酸素もないこの世界で生きていられる」
ただまぁ、さすがに痛いだけでは気の毒なので、軽く説明だけはしておいた。
「酸素なしなのか。じゃあ、しゃあねぇか」
斉藤は納得したようだ。もちろん俺の説明が遅れたこととは関係ないのだが、これで納得してくれる斉藤のことが嫌いではない。
そんなことを話しながら、俺は気をさぐる。
探していた人物の気を、すぐに見つけることができた。
やはり、こっちに来ていたのだ。
「斉藤、俺につかまれ」
俺は斉藤に声をかける。
すると斉藤は遠慮なく俺に抱きついてきた。
ぶっちゃけ気色悪いが、この世界に転送ゲートは設置されていないのでしかたない。
俺は斉藤をぶら下げたまま、気を感じる方へと向かって飛ぶ。
歩いて三十分ほどの短い距離だ。俺が運べば一瞬である。
俺は目的の人物の正面にくるように降下して地面に降り立った。
「ナルセじゃないか。どうしてこんな所に?」




