第07話 異世界アイドル選手権 中編 - 16 - 洋館
第07話 異世界アイドル選手権 中編 - 16 - 洋館
元々、俺はルートワースに深入りするつもりはなかったので問題なかろうと考えていたのだが、人生というものはどうなるか分からないものである。
ここは、そんなダークな資産の中の一つであった。
「けど、こいつはどうみてもただものじゃねぇぞ?」
ここが、どういった代物なのかまるでピンと来ていない斉藤はやっぱり関心していた。
「入るぞ」
俺が門に近づくと、魔法技術によるセキュリティロックが俺を特定して自動的に解除される。
門は自動的に開き、俺と斉藤を迎え入れる。
中に入ると、広大な敷地が目の前に広がっていた。
ただ、あまりに広大過ぎて、建物らしき影が遠くに霞んで見えている。
「おいおい、まぢかよ、あそこまで歩けっての?」
斉藤が遠慮なく感想を漏らす。
「お前が歩きたいなら止はせんが、便利なものがある」
俺は伝統的な返しをしつつ、入口近くにある転送ゲートの作動印に触れる。
「おっ、おお?」
足元に浮かび上がる魔法陣を見て斉藤が楽しそうに声を上げた。
一瞬だけ目眩のような感覚を感じると、周囲の景色は変わっていた。
目の前には古めかしい感じの、いかにもと言った風情をもった洋館が建っている。
窓の数から察するに、どうやら三階建てのようだ。
俺が大きな玄関ドアを開けると、古い洋館にはありがちな、ぎぃっという不気味なきしみ音をたてて開く。
「おいおい、大丈夫かよ? 人いねぇぞ?」
一転して不安そうに斉藤が聞いてくる。
「人がいなくなったのは、管理する人間がいなくなったからだ。それに、使用人がいなくなってからまだ日は浅い。よく見ろ、廃墟にはなってないだろ」
分かっている風の口をきいた俺だが、実際には見るのは初めてだ。だから、昨日まで普通に暮らしていて、ただ人がいなくなった。見かけからはそうとしか見えない、そのままを言っただけである。
「へぇ、すげぇな。確かに昨日まで誰か居たような感じだ」
斉藤も俺が感じたことをそのまま口にした。
「先に行くぞ」
俺はそれだけ言うと、先に立って歩いて行く。
中に入るのは初めてだが、内部構造を知らないわけではない。ここのレクチャーを受けたとき、完全な見取り図を見せられている。
奥に進んでいくと建物の北側に中庭があり、その中央に大理石で作られた女神像がたてられている。
俺はその女神像の前で斉藤を待った。
「いやぁ、こんな家くるの初めてだけど、部屋いっぱいあんな。一体何に使うんだろうな?」




