第07話 異世界アイドル選手権 中編 - 11 - 母娘対面
第07話 異世界アイドル選手権 中編 - 11 - 母娘対面
「はぁん? さては、この可愛いプロデューサーくんに抱きしめられて連れてきてもらったから、それでヤキモチを焼いてんな?」
ラフィネはラフィネで、娘を挑発するようにそんなことを言う。
これは、反発必死だろう、と俺が予想していると。
「そ、そ、そ、そんなことなんて、ないもん。ぜぇぇぇったい、ないもん! そ、そ、そ、それより、あんた食べられちゃうとこだったんだからねっ!」
意外なほど必死で否定した後、強引に本題にもっていく。
イチリアの反応に関して俺はノーコメントを貫くとして、問題なのはその後のラフィネの反応だ。
「はぁ? なんの話よ。あたしは、実験に協力すれば借金をチャラにしてくれるって言うからあそこに居ただけよ?」
むしろ、何邪魔してくれてんのよ、と言わんばかりの表情をイチリアに向けている。
ここは、俺が説明したほうがいいだろうと判断して口を開く。
「あの施設は、異世界の犯罪組織に武器を密輸している連中の研究施設です。あなたは、研究対象者としてあの施設に捕らわれていました。さらに研究を続けるためにイチリアが必要だったらしく、脅迫を行っていました。研究対象となる被験者としてだけではなく、人質としても使われてたんですよ」
非常にざっくりとした説明であるが、これでだいたいのことは理解できるはずだ。
「はぁ、そうなの?」
ラフィネの返事はどこか要領を得ないものであった。
ただ、それはそうなるだろうな、と予想していた感じの反応だった。
首が回らなくなるような借金が出来る時点で、何処かしら壊れているのだ。
俺としては別にそれはそれで問題なかったのだが。
バシッという音が鳴った。
今度はラフィネの右の頬からだ。
イチリアがさっきとは反対側の頬をおもいっきり平手で叩いたのである。
「乱暴ね、この娘。ったく、親の顔が見てみたいものよねって……あたしか、アハハハ!」
ラフィネは自分でボケで自分で笑うという、非常に痛い笑いにはしった。
もちろんそれは、イチリアを挑発するためのものである。
「おかしくないっ! おかしくないんだからっ!」
イチリアの両方の頬から涙が流れ落ちている。
表情だけ見ると、イチリアのほうがよっぽど痛そうな顔をしていた。
たぶんそのことを本人は認めないだろうが。
「まったく、叩かれたのはあたしよ? なんで、あんたが泣くのよ。これじゃ、あたしが悪いみたいじゃないのさ」
そんなことを言うラフィネであったが、さすがに声のトーンは落ちていた。




