第07話 異世界アイドル選手権 中編 - 06 - 倉庫
第07話 異世界アイドル選手権 中編 - 06 - 倉庫
借金関連のいざこざは、リベン法律事務所の専門分野から外れているだろうが、それでも俺やカージより遥かにましだろう。
「どういうご用件で?」
すぐにモリタが聞いてくるが、
「詳しいことはカージに聞いてくれ。一応俺が今関わっている仕事に関することなんでな、最優先で対応して欲しい」
関わりが深いと言っても、モリタはカージと違って俺の部下ではない。なので、強い要請にとどめておく。
「分かりました。微力をつくしましょう」
モリタはいつものように返答したが、それで俺には十分だった。
おそらく、法的な問題はこれでクリアできるはずだ。
「それでは、よろしく頼む」
俺は通話を切る。
このタイミングでちょうど、ピッカーも停止する。
降りると倉庫が立ち並んだ区画の真ん中だった。
いかにも、といった雰囲気が漂っている。
さすがにここまでベタな展開になってくると、少しばかり恥ずかしさを感じてくる。
だが、受け取った住所に向かうと言ったのは俺自身だ。ベタだろうがなんだろうが行くしかない。
気を探ってみたところ、倉庫の中から複数の気がかたまって存在しているのを感じる。
おそらくそれだろう。
俺は倉庫のドアを開いて中に入る。
「誰だ、貴様?」
入口付近に立っていた巨体の男が型どおりの質問をしてくる。
外に見張りを立てていないのは、目立ちたくないからなのだろう。
騒がれたくないので、俺は軽く気を当てて寝かしつけてやる。
「すまんな、しばらく眠っていてくれ」
聞ける状態じゃないことを承知で声を掛けたのは、たんなる雰囲気作りのためだけで他意はない。
倉庫の中に入ると大量の物資が置かれていた。その物資が通路を作り出している。
俺は通路を使うことはせずに、上から状況を確認する。
ちょうど建物の対角線上の位置、つまり俺が入ってきた入口から一番遠い場所に人が集まっていた。
男が数名で女が一人。男はそれぞれに配置につき、侵入者に備えているような感じだった。
その中心部にいるのがイチリアである。
俺はためらうことなく、イチリアのすぐ隣に降りる。
「さて、状況を説明してくれ」
突然降りてきた俺に気づいた男を、脳震盪による問答無用の眠りにいざないながらイチリアに尋ねる。
イチリアは突然俺から現れたことに驚いている様子だったが、
「もう、あたしなんてどうなってもいいんです」
という返答を返してきた。
まだベタが続くのか、と思いながらも俺はもう一度尋ねる。




