第07話 異世界アイドル選手権 中編 - 03 - 置き手紙
第07話 異世界アイドル選手権 中編 - 03 - 置き手紙
その紙には、殴り書きのような感じで文字が書かれている。
「読めん。なんだ、それは?」
未知の異世界言語であっても、話すだけなら不自由はないが、文字となると話は違う。一字たりともわからない。
「書き置きらしいですわ。『探さないで イチリア』って書いてあるらしいですの。まったく、はた迷惑極まりないですわね」
どうやらレヴンはかなり憤慨している様子である。
原理主義的に正当性を追い求めるレヴンにとって、身勝手な行動をするメンバーが許せないのであろう。
もっともレヴン自身が勝手にメンバーになったことに関して、完全スルーしている辺りがレヴンの真骨頂と言うべきか。
わざわざつっ込んだりはしないが、俺は忘れたわけではない。
だがレヴンがどうあれ、やっかいなことになったのは確かである。
当然なことだが、マスター・オブ・クイーン・コンテストにはきちんとしたルールが制定してある。
その中には出場規定というものも存在していた。
出場するアイドル・ユニット間での公正な勝敗を保証するために、その規定は極めて厳正かつ明確なものとなっている。
その中にメンバー要員の規定が存在していた。
アイドル・ユニットには大所帯を抱えるものから、はちみつパンプキωのように極めて小規模のユニットのものまで様々だ。
そうなると、必然的に交代要員のいる大所帯のユニットの方がトラブルがあったさいにどうしても有利になる。
それを防止するために、予備予選から決勝までの間、出場メンバーの変更は一切認められていない。
当然メンバーの数が増えるのも減るのも禁止事項に当たる。
ペナルティは出場資格の停止だ。
非常に厳しい措置だが、この規定のお陰で大所帯のアイドル・ユニットも小規模のユニットも対等に闘うことができる。
つまりだ、イチリアがいなくなったということは、この規定にひっかかることになる。
このままだと、出場停止が確定してしまう。その前になんとしてでも探し出す必要があるということだった。
「それで、探したのか?」
それはもう必死で探しているのだろうなと思いながら、俺は型どおりの質問をする。
「もちろん、メンバー総出で探してるわ。カージは知り合いの探偵に依頼したし、リミィに至っては軍の監視システムを勝手に使ってる。この後どうなるのか、考えるだけでも恐ろしいわね」
レヴンの口調が通常の感じに戻ってきている。話しながら冷静さを取り戻してきたのだ。




