第07話 異世界アイドル選手権 中編 - 02 - すーはーすーはー
第07話 異世界アイドル選手権 中編 - 02 - すーはーすーはー
「すーはーすーはー……おうっ? でたな、サイトー。どこから湧いてきた?」
すーはーを止めた小島が斎藤を見て驚いていた。
けっこうな時間をかけて歩いてきたのだが、まったく見えていなかったようである。
あれだけふらふらになっていたら当然かもしれないが。
「小島ちゃん、最近忙しそうじゃない? なにかあった?」
斎藤は斎藤で他人の話は聞かない方なので、小島の反応は見事にスルーして話しかける。
ただ、それがきっかけとなり、小島は少し考えた。
そして、ようやく俺に話があったことを思い出したようである。
何かに気がついた、という表情になった。
もちろん俺は、その反応を見逃さない。
「落ち着く話はいったん置いといて、本題にはいってくれ」
話がループする前に手を打っておく。
「そうそう、そうだね。でねでね、イチリアちゃんがいなくなっちゃったの」
前置きは長いが本題は短い。いつもの小島であった。
経緯とか現在の状況とか、知りたいことはあったが、それを小島に確認するのは危険である。
そこで俺は秘密じゃない兵器を投入する。
「斎藤、しばらく小島の相手をしといてくれ」
俺の知る限り、小島と同じ土俵に乗ることができるのは斎藤以外にいなかった。
「おっ? おお、よくわからんがまかせろ」
簡単に請け合う。安請け合いこそ斎藤の真骨頂であった。
「ええっ? 落ち着かなくていいの?」
そこで驚くのかよ、小島。と頭の中でつっこみを入れる。
俺には、小島の思考を理解することはおそらく生涯不可能だろうとあらためて思った。
とりあえず、この場は斎藤に任せておく。
「小島、俺は先に行くから、斎藤に一通り説明してから一緒に事務所に行ってくれ」
とんでもなく長くかかる可能性もあるし、一瞬で終わる可能性もある。
この二人はどうにも読めない不確定要素が強い。
二人の間でWiFi通信でもしてるのかと思うようなことがちょくちょくある。
「らじゃーっ!」
女の子がよくやる可愛い系の敬礼を小島がしてみせる。
こういう所は、いくらかアイドルっぽくなっているのだろう。
俺は去り際に斎藤の肩を軽くぽんぽんと二度たたき「あとは頼む」と言い残して自宅へと向かう。
玄関のドアを開けるとレヴンが立っていた。仁王立ちである。
「どうした?」
すごい勢いで睨みつけてくるレヴンに俺が聞く。
すると、レヴンは黙ったまま、俺に向かって右手をバンと伸ばしてくる。
人差し指と親指で一枚の紙を摘んで持っていた。




