第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 33 -トレーニング開始
第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 33 -トレーニング開始
「なんであたしに聞く? 優勝する気はあるのかい? なにがなんでも予選を勝ち抜いて決勝に進み、決勝を制して優勝する。それ以外に、あんたらの目標があるってのかい? まぁいい、教えといてあげるよ。あたしの言うことに逆らったらどうなるか。あんたらは予選で負ける。クイーンを取るなんざ、夢であっても見れないね。それでもよかったら、あたしの命令に逆らってもらっても結構だ」
きっぱりとリミィが言い切ったが。
メンバー全員がキョトンとした顔をしている。戸惑っているのだ。
失敗した。これは俺のミスだ。
不審げな顔をしているリミィに向かって、俺から説明するべきだろう。
「すまない」
割り込むような形で俺が声を張って言うと、トレーニング・スタジオにいる全員の視線が集まった。もちろん、リミィとカージの二人を含めてだ。
それを確認して俺は説明を始める。出来る限り短めに。
「話すのが遅れたが、はちみつパンプキωの出場は決勝戦からになる」
細々とした政治的関与の問題は、一切すっ飛ばして結論だけを話す。
すると驚いた表情をしたのは二人。カージとミリィだ。
「おいおい、そんなの聞いてねぇぞ」
カージが呆れたように俺に言ってきた。
「そりゃ、話してなかったからな」
俺は当然のように答える。
「そういう重要なことは、プロデューサーであるこの俺に話しておいてもらわにゃまずいだろ?」
カージのこの言葉は当然の事だった。
「だから、今話した」
俺は開き直り発言を押し通す。本当は忘れていただけなのだが、この場でそんなことを言ったら指揮にかかわる。
「なるほど、あんたらがたるんだ顔をしてる理由がわかったよ。どうせ決勝に出れるんだと、そうたかをくくってたんだろ? 確かに、決勝出場が目標ならそれでいいさ。だけどね、優勝をめざすんなら話は逆だ。他のユニットはみんな予選を闘い勝ち残った連中だ。闘いの中でアイドルとしての実力を確実に上げてきている。いわば、激しい実戦を生き残った猛者たちだ。その点、あんたらはどうだ? まともな闘いも経験していないひよっこだ。今のまま決勝に出ても相手にならない。二度と立ち上がれなくなるくらいの大恥をかいて終わるだけだろう。いいか、あんたらはとんでもないハンデを背負って、決勝の舞台に立つことになる。そのことを一瞬たりとも忘れるな。これから、あんたらを決勝で戦えるまでに鍛え上げる。それじゃ、始めるぞ」
リミィが小さな手を叩いて、全員に指示を出し始める。
新生はちみつパンプキωが、ここから始動するのだ。
さて、俺が付き合うのは当面ここまでだ。後のことは全てまかせて大丈夫だろう。
トレーニング・スタジオから退出する。
外に出ると、日が大きく傾き西の空に沈もうとしている。
想像していたよりずいぶんと時間がかかってしまった。
今から家に帰って、勉強する時間があるかどうか。
とは言え、決勝まではまだしばらくある。予選大会はこれから始まるのだ。
それまでは、平穏な時間が続くことだろう。
今日みたいなトラブルがなければ、の話だが。
だが、そんなことまで心配していたら、俺の身が持たない。
俺は事務所の下につくと、ピッカーを呼んで帰路についた。
< 中編へ続く >
すみません、想定していたより長くなりそうです。
後編は決勝戦が中心になりますが、その前に中編をはさみます。
どうか、ご了承ください。




