第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 29 -幼女
第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 29 -幼女
少しの間会話した後、また俺たちに話しかけてくる。
「よし、行っていいぞ」
急に許可が降りてピッカーが動き出す。
「今連絡してきたやつか?」
俺がカージに聞くと。
「まぁな。よし、ついたぞ降りよう」
いきなりピッカーが止まった。
敷地の真ん中辺りで、まだどの建物からも離れた場所であった。人影も見当たらない。
とは言っても、カージが降りた以上俺だけ乗っているわけにはいかないので後に続いて降りる。
すると、すぐにピッカーは帰っていった。
一体これから何が起こるのかと見ていると、足元に微妙な気の乱れを感じる。
俺が足元を見ると、俺とカージを中心にして魔法陣が出来上がっていく様を見るとができた。
「こんな場所で転送陣か」
俺が呆れたように口にしたのには理由がある。
転送陣は二点間の移動に使われて、それぞれの場所に対応した魔法陣を書いておく必要がある。使用していない時には陣を消しておくことが可能だが、通路のようなものなので基本固定されて使われる。
つまり、こんな目印も何もないようなだだっ広い場所に設置しておくというのは、あまりいい使い方とは言えない。
もっとも、俺がこの知識を身につけたのは、ルートワースにやって来てからなので、他に何か魔法技術に関わるような理由が存在している可能性がないわけではない。
「まさか、と思うような所が理想なんだとよ」
俺の質問に、カージが実に単純な答えを返してくれる。
単純だが、理解できるような答えではなかったが。
だが、もうそれ以上聞いている時間はなかった。
転送陣が一瞬光ると、俺とカージはまったく別の場所にいた。
どこかの大きな部屋の中である。
ここが何処なのか、ぱっと見わからなかったが、人の気配は感じていた。
部屋の外に一人いる。おそらくそれが、カージの言っていた人物だろう。
俺は黙って様子を見ていることにする。
すると、俺の予測通り部屋の中に入ってきた人物がいる。
女性であった。しかも少女……というよりどう見ても幼女である。
年齢的には四、五歳といったところか。
「おう、よく来たな、カージ」
幼女が手を上げてカージに挨拶してくる。
かなり親しげだ。
もしかして、この男、こんな幼女にも手を出しているのだろうか?
俺が疑いの目をカージに向けていると。
「誤解するな。彼女はリミィ。こう見えても、立派な、うごっ!」
カージが最後に何か言おうとしていたその口に、幼女のコブシがめり込んでいた。




