第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 28 -新たなトレーナー
第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 28 -新たなトレーナー
至って常識的な結論にたどり着くだけでもこれだけ苦労するのだ、これから先ため息の無限連鎖に陥りたくはない。
俺は目でカージに合図を送る。
「よし、それじゃみんなトレーニングを初めてくれ。トレーナーはすぐに連れてくるから、それまでの間自主練習でやっておけよ」
俺の合図を受けて、カージがプロデューサーとして指示を出した。
「りょーかいしました!」
真っ先に声を上げたのは小島である。
俺に話を通したのもこいつだし、どうやら今リーダー的な立場にいるようである。
他のメンバーはみな黙ってストレッチを初めている。どうやら今のを見てヤル気スイッチが入ったのかも知れない。
とりあえず俺はやることがなくなったので、カージと一緒に外に出る。
「あてはあるのか?」
俺が尋ねると、カージは肩をすくめた。
「まぁ、あることはあるが、問題が多くてな」
どうも歯切れの悪い言い方をする。
「ほう? お前から見ても問題が多いと?」
俺は一応つっこんでおく。
カージはアイドルに平気で手を出すようなプロデューサーである。そんな男が問題が多いというのはよっぽどだろう。
「そういうのとは違うヤバさっていうか。……まぁ、口で言うより見たほうが早いな。一緒にくるか?」
カージが俺の方を見て誘いを掛けてくる。
「分かった、いこう」
最近受験勉強が遅れ気味だから気になってはいたが、この問題を放置したらまた後で余計に時間を取られることになりかねない。
なので俺は即答する。
事務所ビルの下で、カージが携帯端末を操作すると近くを走っていたピッカーが寄ってきて止まった。
二人で乗り込むと、すぐに発進する。目的地はすでにカージが入力済みである。
しばらく走っていくと、どんどん郊外へと向かっていき、フェンスに囲まれた大きな施設の前にくる。
「おいおい、マジかよ」
そう言ったのは俺だった。
フェンスに囲まれた建物というのは、ルートワース陸軍の軍事施設である。
「マジさ。あいつはこの中にいる」
カージが答えると同時にピッカーは止まった。軍事施設入り口にある検問所前である。
すぐに軍服を着た男が出てきて、中にいる俺たちに声をかける。MPだ。
「通行証を見せてください」
当然俺は持っていない。カージが持っているとも思えない。一体どうするんだろうと思って見ていると。
「少し待って」
MPが手を上げて、携帯している通信機を手に取った。どうやら連絡が入ったらしい。




