第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 26 -示す
第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 26 -示す
「その根拠のない自信がどこからくるのかは知らんが、実際にやってみたほうが良くないか? 結果はすぐに出る」
今度はきっぱりと誘った。
「はっ。後悔するなよっ!」
アイカは渾身の力を込めて、右ストレートを俺の顔面に向けて放つ。
俺はその拳を左手で包み込むように受け止めた。
「て、てめぇ放しやがれっ!」
アイカの右手は微動だにしなくなっている。俺が掴んだまま放さないからだ。
「これでいいか?」
アイカが渾身の力を込めて後ろ向きに全体重を込めたタイミングを見計らって放してやる。すると、アイカは後ろにすっころんだ。
「て、てめぇ、いきなり何しやがる!」
アイカはあわてて起き上がりながら言いがかりをつけてくる。
おそらく恥ずかしかったのだ。気持ちはわかる。
「君に頼まれて放しただけだ。それより、もう満足したのか?」
俺は冷静に答えて、さらなる挑発をする。
すると、アイカはその挑発に簡単に乗った。
「満足するわけないだろ、ボケがぁ!」
ヤクザ寄りになってきたセリフをチョイスしながら、今度は左の回し蹴りをアイカは放ってくる。
その蹴りは鋭くはあったが、まったく脅威ではなかった。
俺は足首を掴んで、頭の高さで固定する。
レッスン用のレオタードを着ているが、その格好はまるで羞恥プレーをやっているかのようである。
実際俺はそのつもりでやっている。
「て、てめぇ。なんてことしやがる、このドスケベ!」
アイカであっても、この格好は恥ずかしいのだろう。右足で倒れないようにケンケンをしながら文句を言ってきた。
いい傾向である。
アイドルである前に、女であることを意識してもらわないことには話にならないからだ。
ケンケンをしているアイカの右足が浮いたタイミングで、俺は握った左足を引っ張りながら放してやる。
すると、バランスを崩したアイカが俺の方へと倒れてくる。
俺はアイカの体を抱きとめた。
「危ないぞ、気をつけろ」
少しきつく抱きしめながら、アイカの耳元で囁くように言ってやる。
すると、俺の腕の中で少しの間だけ、アイカの力が抜けるのが感じられた。
「て、てめぇ。あ、あ、あたいに何しやがる」
一瞬で我に返ったアイカが、俺の腕の中からあわてて抜け出して行った。
おそらく本人は気づいていないが、俺を男として意識したのだ。いい傾向である。
ただ、そろそろ終わりにしないといけない。アイカばかりに時間を割いていては他のメンバーに示しがつかないからである。




