第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 22 -決意
第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 22 -決意
もちろんこんなことは、他人事だからこそ言えるセリフである。
「ちっ。嫌な予感がしたんだよ。あんたの顔を見た瞬間にな。失敗なんざ恐れない若者の目をしてやがる。昔の俺を見てるようでな」
ようやく俺の目を見てカージが言った。
俺は黙って見つめ返す。
今カージは心の中で葛藤しているはずだ。俺は何も言わずただ待っていればいい。
もしこれで断るようなら、この男は使い物にならない。切り捨てる。
立ち直るまで待っていられるだけの時間は俺にもはちみつパンプキωにもない。
「あいつらは、ガチですごいアイドルだった。結成当初から圧倒的な人気を集めて、瞬く間にトップアイドルへの道を駆け上っていった。マスター・オブ・クイーン・コンテストの予備予選と予選では、他のアイドルを寄せ付けなかった。最初の出場にして決勝に勝ち残ったアイドルユニットの中で優勝候補に目されてたんだ」
急にカージが語り始める。もちろん俺は沈黙を守ってそれを聞いている。
「なのに、やつらは……マスコミは、よってたかってあいつらを叩きやがった。わずか六人の少女を、マスコミ連中が踏みにじりやがったんだ」
湧き上がる怒りを押し殺しながらカージは語っている。やはり、熱い心は失われてはいなかった。
「俺が何を言おうが、マスコミは聞いちゃくれない。面白おかしくスキャンダルを報道し続けた。おかげで、マスター・オブ・クイーン・コンテストは惨敗だったよ。見るも無残な結果さ。ユニットは解散し、メンバーは散り散りになった。そして、俺はここで暮らしてる……」
カージの両手の拳はきつく握られていた。
俺はここで初めて口を出す。
「それで、どうするつもりだ?」
俺が聞いたのはそれだけだった。
「……やらせてくれ……俺は、やつらに復讐をしたい。やつらが奪ったもの、それ以上の物を手に入れて、見返してやりたい。マスター・オブ・クイーン・コンテストの決勝に出場するんじゃねぇ。優勝してクイーンの座を掴み取ってやるんだ」
俺は立ち上がり、右手を差し出す。それは、俺が望んだ以上の答えであった。
カージは俺の右手を取り、共に立ち上がる。
「よろしく頼む。だが、一つだけ確認しておきたい。色々言ってたが、アイドルを喰ったことは事実なんだろ?」
俺が尋ねると、カージは悪そうな顔になってニヤリと笑う。
「ああ、そいつは間違いない」
話したことの全ては自業自得であるが、まったく悪びれていなかった。




