第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 20 -カージ
第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 20 -カージ
「はちみつパンプキωというアイドルユニットがいる。はっきり言って、アイドルと名乗っていいユニットではないような連中だ。そいつらを、マスター・オブ・クイーン・コンテスト本戦に出場できるレベルにして欲しい」
俺はカージの質問を一切無視して話を一方的に進める。
「ハハハ、こいつはいい。あんた、やっぱり正気じゃねぇぜ。アハハハ!」
すると、カージはお腹を抱えて笑いだした。
俺はその様子を黙って見ている。人間ずっと笑っていることはできない。
笑い終われば、嫌が上でも俺の言葉と正面から向かい合うしかなくなる。
そして、三分ほど後にカージは真顔になる。
その間ずっと真顔で黙ったまま見ていた俺の顔を、苦い顔で見ながら聞いてくる。
「いいか、よく聞けよ。マスター・オブ・クイーン・コンテストの予備予選には十三万千七十二のアイドルユニットが出場する。その中で予選に出場するのは千二十四ユニット。そして、最終的に本戦出場を勝ち取るユニットはわずか十六だけだ。つまり、本戦に出場できるアイドルユニットと予備予選で消えていくアイドルユニットの間には天と地ほどの開きがあるってことだ。予備予選突破もままならないようなアイドルユニットが、本戦出場なんざ妄想が過ぎるってもんだ」
真顔になったカージはバッサリと切り捨てる。
「だから、あんたに頼みに来た。あんた以外に引き受けるプロデューサーはいないだろう」
俺の方も遠慮なしに言う。
「ふんっ。足元を見てるってわけか。だが俺は、自分がプロデュースするアイドルを喰った男だぞ? それが分かっていってるのかよ?」
若干苛ついた感じになってカージがそんなことを言った。
もちろん俺の答えは決まっている。
「ああ、承知している。俺としてはまったく問題ない。もし気に入ったヤツがいたら、好きに口説いてもらっても一向に差し支えない」
あのメンツでまともに口説く気になるような女がいれば、ある意味尊敬するかも知れない。それは置いておくとしても、俺の目標ははちみつパンプキωを決勝でまともに戦えるだけの実力をつけさせることだ。それ以外のことはどうでもよかった。
カージが呆れたような表情で俺をみている。
「アイドルは商品だろ? 大丈夫か、あんた?」
アイドルを喰った男とは思えないセリフをカージが口にする。
もちろん俺はまったく取り合わない。




