第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 17 -力説
第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 17 -力説
サリィの主張は間違っちゃいない。実力が伴っていればの話だ。
俺の見る限り、予備予選突破も不可能そうだった。
つまり、本来こいつらは叩き潰される側だったわけだ。
そう考えると、俺の良心が若干痛まないわけではない。
「そうね、サリィの言うとおりだわ。みんな、全力で『はちみつパンプキωのパフォーマンスを会場のみんなに見せつけましょう!」
なにやら感化された小島が盛り上がってメンバー全員に力説する。
厄介なのは他の連中もそれに同調していたことだ。
「よっしゃあ、燃えてきたぜぃ!」
マッチョ系アイドルのアイカが声を上げると、それに釣られるようにして他の連中もそれぞれに気合を入れ始める。
一見すると熱血スポコン物の展開にも見えるが、あくまでこいつらはアイドルである。
アイドルについてはほとんど無知同然だが、このノリはあまりいい傾向だとは思えなかった。
意外なことにメンバーの中で唯一冷めていたのは、レヴンである。他のメンバーから離れた所に立って、冷静に見ていた。
「『はちみつパンプキω』チーム出番ですので、所定の位置についてください」
控室に放送が流れると、メンバー全員が真剣な表情になり走って行った。
俺もその後に続いて控室から出て観客席に回る。
すぐ、はちみつパンプキωによるパフォーマンスが始まったが、会場は前回以上の静寂に包まれる。
まるで無人の荒野で歌ったり踊ったりしているような感じだった。
まだ、ブーイングの嵐になったほうがよっぽどましだろう。
俺なら間違いなく心が折れているところだ。
さすがにこれ以上見る気がしなくなり、俺は会場から出た。
俺は、こいつらのプロデューサーとして、決勝戦に同行しなくてはならないのだ。
考えるだけでも恐ろしい。
とは言え、俺が関わることはもう決定事項なので、放置しておくわけにはいかないだろう。
なんにしても、今のユニットは根本的に変えてしまう必要がある。
ちょっとくらい手を入れてなんとかできるレベルではない。
そんなことは、ど素人の俺にも分かる。
とりあえず俺はすぐに動くことにした。
本気で決勝で戦えるまでにレベルアップをするつもりなら、時間がいくらあっても足りないだろう。正直、手遅れなのかも知れないが、その可能性は考慮しないことにする。
もちろん、出場しないという選択肢が存在しないからである。
俺はまず先に、人材確保から始めることにする。




