第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 16 -条件
第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 16 -条件
俺の手を両手で握り返してカガトが言った。
その席とやらで、どんな難題をふっかけられるか分かったものではないが。俺が受けなければ問題はなくなる。
「スケジュールの都合がつけば、お会いできる機会もあるでしょう」
俺も握手をしながら笑顔で応える。もちろん今のところ、都合をつける予定はなかった。
「ちなみになんですが、今のお話はすべてあなたが『はちみつパンプキンω』のプロデューサーをおやりなるという条件がついています。当然ご理解いただいていることとは承知しておりますが、念のため」
最後の最後にカガトはきっちりと念押ししてきた。
もちろん俺は聞いてないよ、という理屈をつけてすっとぼけるつもりであったが、世の中というのはそうそううまくはいかないらしい。
「もちろんですとも。プロデューサーとして微力を尽くすつもりです」
笑顔を保ちつつ、俺はいけしゃあしゃあと言っておいた。
とりあえず、これで別れの挨拶はすんだ。
俺はさっきからよっしゃーとやり続けている小島を乗り物に乗せると、出てきたときのゲートへと向かう。
大量のゲートが存在しており、一体どのゲートが俺の家の地下ダンジョンに繋がっているのかさっぱりわからなかったが、さすがに無人運行システムは優秀で迷うことなくたどり着く。
俺と小島がメンバーの下に戻ると、全員がテンパっていた。
「間に合った! 次よ、次がうちらの番よ? 急いで準備しよっ!」
小島の姿を見つけて真っ先に駆け寄ってきたのが一番小柄なサリィであった。
するとみんなの前に出た小島が言い放つ。
「みんな喜んで。あたしたち『はちみつパンプキω』はプロデューサーのコネをフル活用して、決勝戦への出場が決まりました。なので、次の舞台は適当にやってもなんの問題もないわ。気楽に流しましょう!」
身も蓋もないとはこのことだろう。普通の感覚ならば到底褒められるようなことではない。だが、簡単に受け入れてしまうのが小島のある意味すごいところである。
「だめよ、そんなの!」
小島の前に立ちふさがったのはサリィだった。
「なんで?」
頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいそうな表情を浮かべて小島が聞き返す。
「あたしたちの目標は何? 決勝戦に出場することじゃない。クイーンを取ることでしょ? たかが予備予選だからって気を抜いてちゃだめよ。全力で他のアイドル達を叩き潰して、格の違いをみせつけるのよ!」




