第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 14 -交渉
第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 14 -交渉
ところが、
「違うってば! 成瀬は伝説のアイドルグループ、はちみつパンプキωのPDとして伝説になる男なのよっ!」
俺より先に頭が痛くなるような発言をぶちかましてくれた。
「ほう? これはこれは以外なご趣味があるのですね」
小島の発言を受けて、なんとも意味ありげな、皆まで言うなわかってるぞ的なニュアンスを含めた発言をカガトがする。
普通の男がやれば嫌味とも取られかねないところだが、目の前のイケメンが言うと寧ろ爽やか発言に聞こえるところがかえってムカつく。
もちろんそんなことを口にしたりしたら、それこそ墓穴を掘るようなものなので言えるわけがない。だからそれでさらにムカついた。
「彼女の言うことを、あまり本気にしないでください」
俺はカガトに対抗するかのように出来る限り爽やかな笑顔を作り、できるかぎりさらりと言った。
ここで必死で否定するのは愚の骨頂だ。自ら認めたように受け取られかねない。
対カガトにならば、この対応が正解だったのだが。
「何言ってんのよ、成瀬くん! もっとしっかりしてよっ。あたしたち、はちみつパンプキωには君しかいないんだからっ! クイーンの称号は誰にも渡さない的なことくらいは言ってやって!」
どうやら小島の闘争本能に妙な感じで火を点けてしまったらしい。
小島は昔からこういうやつだった。基本的に自分にとって都合の良いようにしか解釈しない脳回路の持ち主である。
つまり、俺が何を言おうが小島がいる限りろくな結果にはならないということである。
俺は出来る限り早く、この場を離脱した方がいいだろうと判断する。
「今、予備予選が自宅の地下にあるダンジョンで行われています。今日で終わるようですが、今後二度とこのようなことになって欲しくありません。私の言っている意味わかりますよね?」
俺は小島が話に割り込んでこないであろう言い回しを心がけながら、暗に迷惑していることを伝えたつもりであった。
「なるほど、そう来ましたか。さすがは、その若さで伝説となる交渉を成功させた実業家です。いいでしょう。わたしとしても、あなたとのパイプを作っておくことは寧ろ大歓迎だ。ただ、わたしと言えどもあまり露骨なことはできない。CEO権限で自由になるシード選出枠があります。それで、はちみつパンプキω?が決勝戦に出場できるように手配しますから、後はなんとか実力で頑張ってください。優勝すれば次回以降は決勝からの出場となります。とうぜん、あなたの世界で予備予選が行われることはなくなります。陰ながら健闘を祈ってますよ」




