第02話 VSヴァンパイア!-12 - フェンリル戦1
わざわざ言ったりはしないが、フェンリルを気を使って大気圏まで跳ね飛ばすつもりだ。そこで仕留めて戻ってくるまでの往復の時間である。若干の誤差はあるだろうが、フェーズ1ではそんなものだろう。その間、ルーファとシリンの二人はナルシス・ヴァンパイアと直接対峙することになる。今の召喚で相当力を使っているように見えるのだが、ナルシス・ヴァンパイアは、明らかにルーファとシリン二人がかりで闘うよりも強い。持ちこたえられるかどうかは、際どいところだろう。とは言え、他に選択肢もなさそうだし、時間もなかった。
ルーファが何か返事を返そうとしていたが、同時にフェンリルも俺の方へ仕掛けようとしてきていた。
それに呼応して、俺も動く。
フェーズ1で全力の踏み足が床をぶちぬくが、気を乗せての移動なので足元をすくわれることはない。さすがにナルシス・ヴァンパイアとは違い、フェンリルは俺のフェーズ1全開に反応してみせる。
俺をその牙に掛けようとしたのだ。俺は開けた口の下顎を軽く左の掌底で叩き、無理やり閉じさせてやる。フェンリルはがっつりと自分の舌を噛んだようだが、俺の知ったことではない。俺はそこからさらに踏込むと、真下から遠慮無く気砲を放つ。これで消えてもらっても一向にかまわなかったのだが、フェンリルは自分で噛んだ舌から血を流しながらも、この世の全てを凍てつかせるブレスを放って俺の気砲にぶつけることで、どうにか堪える。だが、俺の気を相殺したり力技で打ち払うようなことまでは出来ないので、天井を消し飛ばしながら俺の放った気砲とともに遥かな上空に向かって昇っていく。俺もすぐに床を蹴って崩落させながら後を追う。
途中でフェンリルを追い越し、成層圏で待つ。俺の気砲に押さた神獣は俺に気づき、俺の待つ場所にたどり着くまでの間に気砲からの脱出を強引に図る。あまりの強引なやり方をしたために、右の後ろ足が半分ほど消し飛んでしまったが、かろうじて逃れてみせた。そうなると俺は、俺自身が放った気砲に正面から対峙することになる。そのすぐ後から、脱出したばかりのフェンリルが襲いかかってくる。俺の隙をつくつもりなのだろう。でかいワンコのくせに小賢しいマネをする。と思いながら、左腕に気を込めて正面から来た気砲を弾き飛ばす。その直後にフェンリルがでかい口を開けて襲いかかってきた。
懲りないやつだ、と思いながら俺はフェンリルの顎に遠慮無く左膝を打ち込んだ。




