第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 12 -呼び出し
第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 12 -呼び出し
入口から突入してきたエルフとドワーフの男たちが、それぞれ三人づつこっちにやってくる。
さすがに武器こそ持っていなかったが、それでもかなり剣呑な雰囲気で控室にいたアイドル達の間に動揺が広がった。
そいつらの標的が俺であることはほぼ間違いない。入る時に寝かしつけた警備員二人が運営側に見つかったか、観客の中の誰かが通報したのだろう。
「お客さん、一緒に来ていただけますね?」
身長は低いが筋肉の量は倍以上ありそうなドワーフが俺の右側に立って言った。左側にはエルフが一人、背後にも一人いて、残る三人は少し離れた場所に立っている。俺が逃げ出そうとした時に、立ちはだかって阻止するためなのだろう。
もちろんそんなことで俺を止められはせんが。
だが、俺は素直に着いていくことにする。
元々、守備していた二人を寝かしつけた時に、この状況は想定していた。
「ちょっと、あんたらうちらのPDに何すんだ?」
俺の前に立ち塞がった警備員の前に、アイカが立ち塞がった。
パッと見、どの警備員より筋肉の量では勝っている。どう見てもアイドルの概念に挑戦しているとしか見えない存在だろう。
警備員二人を寝かしつけておいて何だが。俺としては、今はできるだけ穏やかに話を進めたい。
「この後もステージがあるんだろ? 俺のことは構わず、君たちはそれに集中するんだ」
俺はいたってありふれた感じの正論を言ってやる。これならどんなおかしな思考回路の持ち主でも、間違いなく理解できるはずだ。
実際のところメンバーは頷いた。一人を除いて。
「はいはい、こっじーついていきまーす」
体調が悪くなったクラスメイトに付き添う生徒のノリで小島が手を上げる。
「主様のこと、お願い致します。こっじーさん」
真っ先に同意を表明したのはレヴンであった。
他のメンバーもすぐ全員が賛成する。
「早くしろ。いくぞ」
俺が何を言うまでもなく、警備員は両側から俺の腕を掴み連行する。
小島は後ろの方からトコトコとついて来た。
出来れば断りたいところなのだが、小島と議論をして話が噛み合った経験がないので、今はやめといた方がいいだろう。しかたないが好きにさせておくしかない。
やっぱりというか、俺はゲートを通って別の世界へと連れて行かれる。
巨大な半球状のドームの中に、ナンバリングされたプレートが取り付けられた大量のゲートが存在している場所に出た。
すべてのゲートがそれぞれ予備予選会場へと繋がっているようだ。




