第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 10 -予備予選
第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 10 -予備予選
俺は部屋の中を見回して言った。かつてラスボスの私室として使われていただけあって、相当な広さを持つ部屋であった。それでも、見る限りにおいてせいぜい百人そこらしかいない。
「今日はね。昨日とその前はもっと多かったわ」
レヴンが肩をすくめながら言った。
どうやら、何日かに分けて行っているようだ。
騒音が数日前から聞こえていることを考えると当然の答えだろう。
「最終日はいつだ?」
これは、最も気になる質問であった。
「今日よ。最終日は強豪が集中するの。一番盛り上がって、高得点のラッシュが続くからね。でも、それだけに一瞬も気を抜けないわ」
まるで自分達も強豪の中の一角を占めてでもいるかのようにレヴンが言った。
「抜けないのよ!」
横から小島が全力で同調する。
いったい、こいつらの自信は何処からくるのか俺には理解しがたかった。
根拠の無い自信というのはまだ理解できる。だが、あのステージをやった後で自信を持てるというのは、次元が違うとしか思えない。
俺はそのことに関してはスルーすることに決めた。こいつらの自信がどうあろうと、結果に影響はないだろう。俺としては、これ以上めんどうなことに巻き込まれるのは御免こうむる。
ただでさえこいつらのせいで、受験勉強に支障をきたしているのだから。
俺のそういう所を見透かされていたわけではなかろうが、少なくとも焦りのようなものがあったことは確かだ。
だから、こいつらが次に突然何を言い出そうとするのか、それを予測しそこなってしまう。
「でねでね、成瀬くん。何か感じない?」
いきなりというか、唐突というか、あいかわらずというか、小島が言い出す。
「ん? どういうことだ?」
俺は不覚にも反射的に聞き返してしまった。
「もうとっくに分かってるはずよ? あそこにも、あそこにも、あそこにもいるのに、あたしたちにないもの。そう、その通り。あたしたちに足りないものはただ一つ、敏腕プロデューサーの存在よ!」
もちろん俺は、少しも分かっていなかった。そもそも、わかりたいとすら思わなかった。
ただ、それとは関係なく嫌な予感がする。
「それがどうした?」
後から考えたら、俺はこの質問をするべきではなかったのだろう。
小島は左手を腰に当てると、右手の人差し指をビシッと俺の顔に向けて突きつける。
「敏腕プロデューサー!」
言ったのはそれだけだったが、言わんとしていることは嫌というほど伝わってきた。




