第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 08 -ユニット
第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 08 -ユニット
大量のアイドルがいるが、俺が入ってきたことを気にするような女子は一人もいない。
ユニットごとに集まって真剣に話したり、振り付けの練習をしたり、あるいは言い争いをしている女子もいる。やっていることは、それぞれ様々であるが、全員に共通しているのは真剣なこと。そして、他人のことを気にするような余裕のある者は一人としていないということ。
まるで戦場のような雰囲気であった。
俺はその中から知り合い三人の姿を探す。
すぐに見つかった。一番部屋の奥にいてタオルで汗を拭っているところだった。
俺は近づくなり話しかける。
「酷い出来だったな」
まずは感想から入った。
「な、なんであんたがこんな所に?」
驚いたような反応を示したのはシリンである。
「それはこっちのセリフだ。俺の家の地下で何をやっている?」
俺は至極当然の質問をする。
「そ、それは……」
シリンが言いよどむと、横から小島が割り込んでくる。
「あたしが説明するから、シリンちゃんは体を休めて」
どう見ても小島の方が疲労しているようなのだが、小島にはこういう所がある。他人の世話を焼くのが大好きなのだ。
そして、それだけではない。
「あたし達もう決めたの、優勝するって!」
話しがぶっ飛ぶ癖があった。
当然俺はわけが分からない。
「話が見えん。レヴン、通訳してくれ」
俺はすぐレヴンに話を振る。
するとレヴンは一通りメンバーの顔を見てうなずき合ってから口を開く。
「わたくしの場合、主様のためにこの場所を調査するために降りてきたことがきっかけでした……」
レヴンが話し始める。
ただ、結構長い割にひどく薄い内容の話なので要約するとこういうことだ。
シリンとレヴンが、騒音の元を調べるために、それぞれ地下の探索をやっていると、最下層までたどり着いた。
音源である元のボス部屋にたどり着いたのはいいが、何をやっているのかは理解できなかったらしい。
アイドルのコンサートなど知らないのだから当然だろう。
どう報告をしたものかと迷っているところに、メンバー集めをやっていた小島と出くわす。
猛烈な勧誘を受けて、シリンとレヴンはユニットの一員となる。
メンバーが揃ってユニットは本格的な活動を開始する。
その第一回目のステージがさっき見たやつであった。なんというか、とても無残である。
「個人的な事情はある程度把握した。それで、今ここで何が起きていのか話してくれ」
俺としてはそっちの方が知りたかったことだ。




