第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 07 -ブーイング
第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 07 -ブーイング
そのセリフを聞いた俺の気持ちが分かるだろうか? 全身に鳥肌が立つというか、身の毛がよだつというか、なにか恐ろしいものを見た気がする。
ただまぁ、一番の美形には違いないだろうが、恋愛系アイドル……。
いや、もう俺はこれ以上考えるのをやめた。
自ら進んで、茨の道を進むこともあるまい。
そして、次がラストだ。
いや、ラスボスと言い換えたほうがいいか。
「やっほー! 今日もみんなに会いにきたよー! みんなのためのアイドル小島嘉子さんじょー。こじよしって呼んでねっ!」
アイドルの挨拶的にはこのユニットの中で、最も平凡なものであった。
なのに会場の反応は他の五人とはまるで違うものである。
さすがに会場全体が沸き立つような感じではなかったが、まんべんなく応援する声が上がっていた。
アイドルとしては、まずまずといったところだろう。
もちろん、このアイドルユニットのメンバーの中では圧倒的な人気を誇っている。他がひどすぎるというのが本当のところなのだが。
なんにしても、アイドルユニットとしては、明らかに一枚看板であり、問題が有りすぎる。
自己紹介が終わると、曲が変わりアイドルユニットとしてのパフォーマンスが始まった。
それを見た限り、想像以上にひどいものであった。
踊りは六人とも各々の特徴を活かしていると言えば聞こえは良いが、ようするにバラバラで統一感は皆無。歌の方は、うまいやつと下手くそなやつが混在していて、完璧な不協和音を奏でている。普通に聞いているだけで、普通に気分が悪くなった。
当然ながら演奏の間中、会場全体にブーイングの嵐が吹き荒れた。
驚いたことに、こいつら六人は会場全体を埋め尽くすブーイングの嵐の中、動揺することなく最後までパフォーマンスをやりきった。
鋼のようなメンタルを持った連中だと少しばかり関心したが、逆に言えばそんなメンタルを持っているようだからここまでひどいパフォーマンスを人前で披露できるとも言える。
おそらく演奏が終わった時、ホッとしたのは観客の方だったのではないだろうか。
俺は密集した観客の中をすり抜けて、舞台袖から他の部屋に通じている扉を通った、六人組を追いかける。
扉を二人の守衛が守っていたが、俺は軽く気を当てて寝かしつけてやる。
起きた時にはスッキリ爽やかな目覚めが約束されている。
部屋に入ると、まぁ最初から分かっていたことだが、控室だった。




