第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 05 -コンサート
第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 05 -コンサート
エルフ系やドワーフ系と言ったおなじみの亞人系の他にも、ゴブリンや馬鹿みたいにでかい図体をしたトロールもいる。
種族は様々だが、それぞれの手には色とりどりのサイリウムっぽい発光体が握られており、みんな懸命にそれを振っている。
彼らの注目と熱狂を集めているのは、遥か前方に設置された舞台上にいる五人の女の子だ。
全員が同じデザインで色違いの制服を着て、曲に合わせて歌いながら踊っている。
この状況、どう見てもアイドルコンサートであった。
ラスボス部屋はそこらのコンサート会場より広いので、一体どれほどの観客がいるのかちょっと想像がつかない。
つまり、夜な夜な聞こえてくる騒音は、こいつらのせいだったのだ。
だが、今はそれよりもやらなくてはならないことがある。
消えた三人の女たちの行方である。
幸いなことに、今踊っている五人のアイドルの中にその姿はない。
制服のデザインがまるで違っていたので、見た瞬間に確認できている。
これだけの数の気が邪魔をして、三人の気を特定することは困難だった。
俺の仮説が正しければ、わざわざ探す必要はないはずである。
ただ待てば、それでいいはずだ。
曲が終わると、一時的に歓声が高まり、五人のアイドルが舞台上から姿を消すと急速に静まっていく。
静まりきった状況で、次の曲が流れ初めた。
だが、歓声はまるで盛り上がりに欠けており、最前列の数名と後はちらほらとまばらにサイリウムを振っているのが見えた。
さっきまでのように熱狂している雰囲気はまるでなく、なんだか惰性で振っているような感じであった。
その理由はすぐに分かる。
登場してきたアイドルはさっきまで踊っていた五人組ではなく、まったく別の六人組ユニットであった。
登場してきたユニットは、それぞれ同デザインの色違いの衣装を着ている。俺がさっき一つ上の階層で見た制服だった。
流れている音楽に合わせて、向かって左端の女の子から自己紹介が始まった。
「はぁーい、みんな盛り上がろうよ! みんなのちっちゃな指人形こと、サリィちゃんだよっ!」
それが一人目だった。初めて見る顔で、可愛いのか可愛くないのか、いまひとつよくわからない女の子で、特徴は身長が低いこと。
その意味では可愛いのかも知れない。
自己紹介ではまったく盛り上がる感じがなく、その反応が一番的確な評価なのであろう。
サリィちゃんが引っ込んだ後でてきたのは、右端の女の子だった。




