第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 02 -不信音
第07話 異世界アイドル選手権 前編 - 02 -不信音
家の中だけですめばいいのだが、そろそろ外にも漏れ出すレベルにまで達してきている。
さすがにこのままでは、近所から苦情がくることは必然である。
そうなる前に俺は手を打つことにした。
それでなくても最近は、女共が大量に棲みついてきて、妙な噂になっているのだ。
このままだと、新興宗教の教祖か何かにされかねない。
というわけで、地下迷宮が誕生してから一週間後の夜、俺は受験勉強を早々に切り上げて自ら乗り込むことにした。
もちろん一人でだ。
俺はレヴンやシリンと言った連中が、地下迷宮に降りていってからどうも様子が怪しいと見ている。
なにやら俺には秘密でこそこそやっているようなのだ。
それも含めてつきとめる必要があった。
俺は家の中の気配を探りつつ、自分の気配を消して勝手口横の扉を開く。
そこは元々納戸があった場所なのだが、今は地下への階段があった。
スニーキングミッションはなんといってもチロの得意分野なのだが、それほどではないにしても俺にも出来る。
気配を完全に消すためには、飛空法を使うことはできないが、足音の少ないスニーカーを履き、黒の軽量ジャケットを着て闇に紛れる。
さすがに俺でも完全な闇の中では何も見えないので、気を発して周囲の感覚をつかむ必要があるのだが、それができない以上明かりが必要だった。
星の光程度の光があれば十分なのだが、そんな微妙な光を発する物となると逆に難しい。それで俺は、スマートフォンをタオルにくるんで使えないかと考えたが、それだとスイッチの入り切りが難しいので結局ティッシュにくるんだ。スイッチはティッシュごしだと十分扱える。
そこまでやる必要があるのかとなると疑問も浮かぶが、俺の家に棲みついている女共が関わっているとなると甘く見ないほうがいい。
そういう方面では、信頼しているとも言える。
ティッシュ越しのスマホライトを頼りに地下に降りていく。
俺が空けた大穴ががそのままになっているが、その穴を使って飛び降りる。気を使いたくないので、スニーカーと足を使って音を出来る限り小さくする。
チロみたいに無音とはいかないが、よほど注意していなくては聞き取れないはずだ。
五十階層ほど降りたところで、上から複数の気配が降りてくるのが感じられた。
それだけではなく、最下層の辺りからは多数の気が感じられる。