第06話 異世界ウォーズ 後編 - 54 - モリタとの……
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 54 - モリタとの……
俺は魔界マドゥフに戻る前に、リベン法律事務所に立ち寄った。
マドゥフとルートワースの国交樹立に向けて、全員がひどく慌ただしいく働いている状況であった。
そんな中でもモリタが出てくる。
「うまく行きましたか?」
よほど忙しいのだろう、前置きなしでいきなり聞いてくる。
「ああ、全ての株式の売却に応じてくれた。買収の方はリベン法律事務所に頼むつもりだが大丈夫か?」
あまりに慌ただしそうにしているので、俺は一応確認しておく。
「ええ、それなら大丈夫です。私の知り合いの弁護士や元官僚の何人かにも話を付けて、人員を大幅に増やす目処がついてます。株式の買収くらい十分対応できますよ。ただ、さすがに運営は無理なので、CEOと重役はどこからか引っ張ってくる必要がありますが」
モリタの返事を聞いて、問題なさそうだということが分かった。
「すべて任せる。それより俺は自分の世界に帰るから、後のことはたのむ」
俺が本当に伝えたかったのはこれだった。
「ええっ? 後を任せるって、どうするんですか?」
あからさまにモリタは驚いていた。それはそうだろう。言ってなかったからな。
「当面はいままで通りやってくれ。マドゥフ側の人材はゼグルスがなんとかするだろう。いなければゼグルス本人が対応するしかないだろうがな。まぁ、そこまで俺が責任を持つ話じゃない。冷たい言い方かもしれんが」
俺には俺の生活というものがあるのだ、それを犠牲にしてまでマドゥフのために働くつもりはなかった。
「うーん、これから先、色々と大変ですねぇ。正直、貴方に全ておんぶに抱っこでしたから」
モリタは頭を抱えていた。まぁ、無理もないだろう。だが、所詮俺の目的は日本への異世界からの干渉をやめさせることでありその目的は達成したのだから、これ以上関わるのは俺にとってだけでなくマドゥフにとってもろくな結果にならないだろう。
それが俺の判断であった。
口には出さなかったが。
ここで、意外なところから援護射撃がくる。
「主様は、これ以上ない働きをされました。本来マドゥフにもルートワースにも一切関わりのない方なのです。感謝されこそすれ、これ以上主様に頼るのは筋違いというものです」
そんなことを言うのは、もちろんレヴンしかいない。とことんまで正論で押し切るその態度は、平和原理主義者から俺原理主義者に転向した今も変わっていなかった。
「そうですね。わかりました、これは私が受けた仕事です。リベン法律事務所として出来る限りの力を尽くしましょう。とんでもない仕事を持ってきてもらって感謝していますよ。貴方の世界がどんな所かは知りませんが、正直うらやましいですよ。まぁ、ないものねだりの愚痴ですがね。それではお達者で」
モリタは別れを告げる。意外とあっさりしたものだった。
弁護士らしいといえばらしい対応である。
「あんたも達者でな」
俺も別れを告げる。