第06話 異世界ウォーズ 後編 - 53 - 決着
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 53 - 決着
「今更もったいつけても仕方ない。端的に言いましょう。あなた方が保有するリヴォーク社の株をすべて魔王ゼグルスが買い取ります。一株乗らずすべての株を手放すことが、我々があなた方との戦いを終わらせる条件です」
これこそが、俺の最終目標であった。
リヴォークが自分達の物となれば、今後未来永劫悩まさせることはない。
それだけではない。極めて高度な魔法技術も手に入れることができる。さらには、優秀な人材を確保することもできるだろう。
良いことづくめであったが、リヴォーク社の株式は非公開株だった。手に入れるために、えらい苦労をすることになってしまった。
「やはり、そう来ましたか。ですが、この交渉をことはわることはできない。貴方のことだ、すでにルートワース政府は了承済みなのでしょうね。まったく……。我々の唯一の失敗は、貴方と関わってしまったことだ。貴方と関わってさえいなければ、こんな事態にはならなかった。……まぁ、今更何を言っても始まらない。会社を危うくしてしまった私が言うのもなんですが、社員の雇用は守られるのでしょうか?」
おそらく、経営者としての最後の挟持をコジマは口にする。
「もちろん、社員全員、その責任を問うことは致しません。ただし、それは社員のみです」
俺は断言するように言った。
当然経営陣は別である。全員を解雇するつもりだ。CEOも含めて。
「わかりました。なら、謹んでこのお話お受け致しましょう」
いわばそれは、リヴォーク社の無条件降伏であった。
「懸命なご判断です。後の手続きはすべてマドゥフ政府の代理人として、リベン弁護士事務所が引き継ぐことになります。もう二度とお会いすることもないでしょうが、残りの人生ゆっくりお過ごしください」
俺は社交辞令で締めくくる。
なんにしても、これですべてが終わった。
リヴォークだけでなく、ルートワースの企業が日本に関わってくることは今後二度とないだろう。
後はいくつかの後始末を終えて日本に帰るだけである。
俺がレヴンと一緒に帰ろうとしたとき、レヴンは扉の前で立ち止まる。
そして、部屋に残ったコジマCEOに背中を向けたまま言う。
「最後に一つだけ言っておきます。すべての主因はあなた方の野心にあります。もっと穏やかな選択をしていたならこんな結末は迎えなかったでしょう」
その言葉を言い終えると、レヴンは俺に目を向けて先を促した。
後に残ったコジマCEOからの言葉はなかった。背を向けたままだったので、どういう反応があったのかも分からない。
だが俺は彼が声を押し殺して泣いていることを知っていた。
振り返らなかったのは、最後の手向けであった。