第02話 VSヴァンパイア!-10 - 神獣召喚1
このナルシス野郎がいくら自分に酔いしれようと、そのこと自体俺としてはどうでもよかったのだが、さすがに見ているこっちが恥ずかしくなってくる。そろそろ、俺が直接動くことにする。
俺はナルシス野郎の反応速度を若干上回る速度で懐に入り、気を込めた掌底で正面に向かって軽く突き飛ばす。ナルシス野郎が一生懸命に走ってきた距離を、ほぼ半分の時間で移動して、高価そうだが無駄にでかい椅子をぶち壊した後、その背後の壁にへばりついた。
壁に亀裂くらいは入ったかもしれないが、ぶち抜くまでには至らない。俺がそうなるように手加減したから当然である。こいつが簡単に死なないのは証明済みだが、逃げられでもしたらめんどくさい。
壁にへばりついていたナルシス野郎は、一旦床の上に落ちると程なくして復活する。
「き、きさまぁ! 一体、何者だ?」
大広間の反対側から俺を睨みながらナルシス野郎がそんなことを言っている。もちろん俺にはそんなことなどどうでもいいので、単刀直入に用件だけを伝える。
「貴様のかけた召喚魔法をすべて解除しろ」
俺の要求には、まったく理不尽さもなければ無茶な要求もない。至って正当な要求であった。どう見ても、理不尽なことをされているのは俺の方であり、そのことに関してはいささかなりとも頭に来ているので、口調にでてしまってはいる。だが、さすがにそこまで自重するつもりはない。
俺の要求に対して、ナルシス野郎は呪文を唱え始めた。己の流した血を使って中空に何やら書いてる。斃すだけならば、わざわざそんなのに付き合う必要もなく、気砲一つでケリがつくのだが、ヤツが要求を飲むまではそうもいかない。
「あれは召喚陣です。私は見たこと無いものですが、かなり強力な魔力を注ぎ込んでいるところを見ると相当強力なモンスターを召喚するつもりです!」
俺の横に並んだルーファが説明してくれる。体が小刻みにふるえているのは、おそらく恐怖を感じているからなのだろう。
今までこの世界で闘った感触では、このままでも十分にいけるだろうと思ったのだが、この場に斉藤がいることを考慮して保険をかけておくことにする。
まぁ、フェーズシフトをやって、ノーマルの状態から1にシフトアップしただけなのだが。
部屋全体……ではなく、城を含めたこの周辺地域が、俺の気の変動を受けて一瞬振動する。ルーファとシリンは俺に向かって驚いたような視線を向けてくるが、斉藤は地震だと思ったらしく辺りの様子をきょろきょろと見回していた。