第06話 異世界ウォーズ 後編 - 45 - 国交樹立
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 45 - 国交樹立
「ありがとうございます。こちら側における喫緊の対応はすべてリベン弁護士事務所に任せるつもりです。その後、正式な大使が決まり次第、ルートワースに臨時の領事館を立ち上げ、国交樹立後は大使館を作りたいと思いますので宜しくお願いします」
俺は簡単に説明したが、実際にはそう簡単な話ではない。なにしろ、魔界にはまともな人材と呼べるような人材がいないのだ。おそらく俺がやったようなことを出来る者がいるとするなら、魔王ゼグルスくらいのものだろう。さすがに魔王に大使をやらせるわけにはいかないので、これからが大変になる。当面はなんとしてでもモリタにがんばってもらう他なかった。
「分かりました。それと、ある程度目処がついた段階で、正式な国交樹立宣言を魔王ゼグルス陛下をルートワースに招いて行いたいと大統領が申しております。お受けいただけますか?」
おそらく大統領閣下は、膨大な量の魔鉱石を埋蔵している魔界マドゥフとの国交樹立を魔王ゼグルスと共に宣言することで、票に結びつけようという腹積もりなのだろう。ここら辺りは、日本の政治家とあまり変わらない。
「もちろんですとも。そのご提案、喜んでお受けいたします。二ヶ国間のこれからの友好関係を築くためにも是非にと大統領閣下にお伝えください」
俺はにこやかに応じた。
相手にどういう思惑があるにしても、こういう時はできる限り早くトップ同士の会談を行っておくべきなのだ。
そうすることで、二国間の条約はより強固なものとなる。
ただ外交というものは、その時の状況で大きく変化するということも理解しておく必要がある。折に触れてというのが、外交の基本なのだから。
「良い返事がいただけたこと、大統領も満足されるでしょう」
にこやかにカナエ外務大臣が答えた。
ここで、主目的は一通り果たしたが、俺にはまだ確認しておくことがあった。
せっかく官僚だけではなく閣僚がいるのだから、ここはそれを利用しない手はない。
「実はヴェリック社という武器を専門に取り扱う企業が、魔界マドゥフに対して兵器の売り込みに来ております。このヴェリック社のことはご存知でしょうか?」
俺はカナエ外務大臣がどこまで承知しているのかも含めて確認するために聞いてみる。
「もちろん。その親会社が採掘権の認可を求めてきました」
直接名前こそ出さなかったが、はっきりと認識しているということをカナエ外務大臣は伝えてくる。