第06話 異世界ウォーズ 後編 - 44 - 外務大臣
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 44 - 外務大臣
「あなたが、魔界マドゥフから来られた全権委任大使というわけですね? 紹介に預かりましたカナエです。こちらこそ宜しく」
そう言って、カナエ外務大臣は俺の手を同じように両手で握り返した。
さすがに政治家、そつがない。
「それでは、座って話しましょう」
握手を終えた大臣が着席を促す。
「では失礼して」
俺はすぐに大臣の言葉に従ってイスに座った。
位置的にはさっきと同じで、違うのは一人増えたことくらいだ。
ただし、その一人が外務大臣となれば大きい違いであるが。
「さっそくですが、あなた方のお話を大統領に報告して検討してみました。結論から先に申しましょう。できるだけ早期に魔界マドゥフとの国交を樹立したいとの意向でした。そして、私もそれに同意いたしました」
カナエ外務大臣の持ってきた答えは、ほぼ満額回答に近いものであった。
だが、具体的な手続きに入る前に知っておかなくてはならないことがある。
「一つ質問をしてもよろしいでしょうか?」
俺は確認を取る。たとえ拒否されようが聞くので、これは形式上の問題である。
「なんでしょう?」
カナエ大臣は特に嫌な顔などせず、答える意思を示してくれる。
「リヴォーク社からの反応は何かありましたか?」
俺はオブラートに包んだりせず直球で聞く。あそこまでやっといて、今更回りくどい質問をしても仕方ないからだ。
「ええ、未開地域での魔鉱石採掘権の認可を求めてきました」
予想通りの回答だった。
「それで、許可の方はどうされたのですか?」
俺が本当に聞きたかったのはここの所である。
「申請内容に大幅な誤りがあったことと、現地政府の許可がとれていないという理由で許可は降りませんでした。もちろん国家間での外交とは関係のないことなので、国交樹立に向けての折衝はこれから行うことになります。私が来ましたのは、実務者レベルでの協議に移る前に、ご挨拶だけすませて置きたいと思ってのことです」
どうやら魔界マドゥフに埋蔵されている資源は国家レベルでの管理下に置こうという判断のようだ。後々どこかの企業が複数参画することになるだろうが、条約による大幅な制限下に置かれることになるだろう。さすがに一企業だけに任せるには、あまりに巨大すぎる資源であるという政府判断なのだ。