第06話 異世界ウォーズ 後編 - 43 - 待機
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 43 - 待機
「もちろんですとも。差し上げますので、ご自由にお使いください」
俺は気前よく言った。元々宣伝用のパンフレットなので、大したことが書かれているわけではない。
「では、お預かりいたします。このまましばらくお待ちください」
頭を下げてそう言い残すとシダは部屋から出ていった。
結局のところこれで第一関門は通過である。次の関門は、俺たちとは関係の無い所で起こるはずだ。
すでに帰還しているヴェリック社の三人からの報告が送られてきているはずのリヴォーク社が、なんらかのアクションを起こしている頃である。
その直前に、俺たちから先に内部情報を流してやった。今頃はリヴォーク社と外務省との間で楽しいやりとりがされているに違いない。
そこに立ち会えないことは残念である。
結局俺たちは三時間も同じ部屋で待たされることになったが、別段待ち長いとは思わなかった。というのも、俺とモリタは仮眠を取っていたからだ。
すでにやるべきことは終わっていた。罠をしかけて餌を蒔いた。後はゆっくりと待つだけのことである。
俺がソファに沈み込むように目を閉じていると、レヴンがこっそりと俺にピッタリと寄り添うように座ってきて俺の体に手を回して来たが、気づかないフリをした。さすがにそこまで俺は、無粋な男ではないつもりだ。
部屋に入ってこようとしているシダの気を感じて、俺が目をさました時もまだレヴンは俺にピッタリとひっついたままだった。
「レヴン、人がくる、離れろ」
俺がレヴンの耳元で囁くように言ってやると、はっと周囲を見回し慌てて元の席へと戻っていった。
さすがに人前で体裁を整えるくらいの常識はあるらしい。
「お待たせいたしました」
シダが帰ってくると、高齢の女性を伴っていた。
俺は立ち上がり二人を迎える。
その女性が何者なのかすぐに検討がついたからだ。
「まずは紹介しておきます。この方は、ルートワース外務大臣のカナエです」
シダが隣の女性を紹介する。
さすがにいきなりこんな大物を連れてくるとは予想していなかったが、可能性はあると思っていたので慌てる必要はない。
「初めまして、魔界マドゥフの魔王ゼグルスより全権をまかされてやってまいりましたナルセと申します。横にいる女性が魔王ゼグルスの長女レヴン。こちらの男性は弁護士のモリタです。以後お見知りおきを」
俺は簡単な自己紹介をした後、両手を差し出す。さすがに大臣相手に片手で握手というのは気が引ける。