第06話 異世界ウォーズ 後編 - 42 - 連絡
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 42 - 連絡
「うーん。言わんとされることはわかりましたが、私の一存では判断ができませんね。というか、外務省の権限を逸脱することになります。外交となると、政治的な判断がどうしても必要で、大臣の判断を仰がなくてはなりません」
渋ってはいるが、シダの反応はさっきまでとはまるで違うものになっていた。
結構強引ではあったが、理詰めで押し通したことが功を奏したようである。
「では、今すぐ大臣と連絡を取っていただけませんか?」
俺は間髪を入れず申し込んだ。
押すときには一気に押さなくてはダメだ。時間的な余裕がないということもあったが、交渉の流れが来ているうちは引かないほうがいい。俺の経験ではそういうことになっている。
「今すぐですか? さすがにそれは難しいと思いますが……」
不審そうな目で俺を見ながらシダは渋っている。
ここで俺は爆弾を投下する。
「実は、ルートワースのとある企業が、魔界マドゥフにある魔鉱石鉱床の採掘権を取りにこようと画策しています。そのために、魔界マドゥフと別な異世界との戦争まで引き起こしました。これは明らかに外交問題となるでしょう。ですが魔王ゼグルスとしては、そうなる前に正規な外交手続きを持って決着を見たいとのお考えです。いかがでしょう、すぐにでも大臣に連絡を取っていただき、本格的な国交樹立に向けての検討を初めていただけませんか?」
俺の話が終わるか終わらないタイミングで、新たなペーパーを差し出す。
それを何気なく手に取ったシダの目の色が変わった。
それだけではなく、みるみるうちに大量の汗が額に浮かんでくる。
「こ、これは……これは、本当のことなのでしょうか?」
震える手でポケットからハンカチを取り出して額の汗を拭いながらシダが聞いてくる。
俺は逆に余裕ある態度で話す。
「まだ正式な試掘はしておりませんが、一つの惑星のほぼ四分の三を締めるほどの魔鉱石鉱床が広がっていることは確実です。これの採掘権を一企業が独占したらどういうことになるかというとをお考えください。ちなみに、画策している企業はこちらです」
俺は予め用意していたパンフレットを差し出す。
それは、リヴォーク社を紹介するためのパンフレットである。異世界事業に関与している企業の資料をリベン弁護士事務所は揃えている。このパンフレットもその中の一つだった。
「これをお預かりしても構いませんか?」
パンフレットを受け取ったシダがそう聞いてくる。