第06話 異世界ウォーズ 後編 - 39 - ルートワースタワー
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 39 - ルートワースタワー
モリタは丁寧に説明するが、たぶんそれでは足りない。
「銀行? ってなんですか?」
やはり俺の予想通りだった。金融システムそのものが存在しない世界から来たのだ、分かるはずがなかった。
ただ、通貨制度がない世界から来た人間に、銀行のことを説明するのは至難の業だろう。
実際、聞かれたモリタもどうやって説明したものか頭を抱えていた。
だが運がいいことに、ここで目的地に到着する。
「タイムリミットだ。降りるぞ」
停車すると俺は一番先にピッカーから降りる。続いてモリタとレヴンも降りた。
目の前には巨大なビルが建っている。おそらく、ここらで一番大きなビルだ。
これだけを見ると、まったくもってマンハッタンのど真ん中にいるような気になってくる。
だがもちろんここはビッグアップルではない。目の前にそびえ建つビルは、地球上に存在する一番高いビルの倍以上ある。高さにすればおよそ二千メートルほどか。真下からだと頂上を見ることは困難であった。
「なんて巨大な城……こんなもの、本当に人が建てたっていうの?」
信じられない物でも見るかのように、レヴンが見上げながら漏らした。
「魔法技術の粋を集めて作られたルートワースタワーです。ルートワース政府の機能がほぼ全てこのビルの中に集約されていて、およそ五万人の人間が24時間常に働いています。このビル一つで、ほぼ小さな都市に匹敵すると思ってください」
このビル一つで、惑星一つ分の維持管理を行うことが可能であった。もちろんそれだけではない、異世界との公益や国交もこのビルの中にある一つの部署によって管理されている。ドバイに建っているビルのように、ただ大きいだけのハリボテではない。
「さぁ、案内してくれ」
俺はモリタを促した。
「そうですね、行きましょう」
それから十分後には、俺たち三人は311階にある外務省の受付にいた。
普通ならば簡単に受付などしてもらえないだろうが、さすがに弁護士と同伴していれば門前払いはできなくなる。
それに、受付で提出した魔界マドゥフ魔王ゼグルスの名義で発行された全権委任状は、俺が全権委任大使、もしくはそれと同等の人間であることを保証するものであった。
もちろんそれらの証明書はすべて、弁護士であるモリタが作成したものであり、法的な問題点はすべて潰してある。
なので、若干の待ち時間はあったが、すぐに奥の部屋へと案内される。
中堅とはいえ、弁護士事務所を構えているシニアパートナーがついて来たのだ、無下にできるわけがない。