第06話 異世界ウォーズ 後編 - 36 - レヴン
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 36 - レヴン
血相を変えてレヴンが詰め寄ってくる。
支配したのは俺のせいではないし、レヴンは人間ではないだろ、と言いたかったが、言わないだけの分別はある。人間だろうが魔人であろうが、女相手にそんなことを言えば自分自身の墓穴を掘るようなものだ。もちろん、俺にはそんな趣味はなかった。
「時間がない。その件に関しては、今度ゆっくりと話そう。それじゃ、モリタ。すぐに出れるか?」
俺はレヴンのことにはなるだけ触れないようにして、モリタに話しかける。
「いつでも」
簡単にモリタが返事を返してきた。
それを受けて俺は歩き始める。帰って行ったヴェリック社の連中を追うためだった。
「ちょっと待ってください、主さま! まだ話は終わっていません」
レヴンはクレームの続きを要求しながら、俺についてくる。
「いつまでついてくるつもりなんだ? 時間がない。言っただろ、また今度話すと」
俺は止まらずに説得を試みるが。
「そんなことはどうでもいいんです。問題なのは、私を一人で置いていかれようとしてることです。私はなにがあろうが、主様のおそばを離れるつもりはありません!」
なるほどそっちだったか……。俺は読み誤っていた。
だが、そうなると厄介だ。
説得している時間はないし、そもそも説得が通じる相手でもない。
こうなれば、覚悟を決める必要があるだろう。
「わかった。だったら一緒にこい。ただし、俺の計画の邪魔になるようならすぐにこっちの世界に叩き返す。それを忘れるな」
もちろんそれは冗談などではない。無いのは時間だけで、それを実行することのできる力はすべて俺にはある。
「わ、わかりました」
俺の本気が少しばかり伝わったのかも知れない。
レヴンは唾を飲んで素直に答えた。
「よし、いい子にしとけよ」
丁度ルートワースからのゲートが開く位置にくる。
目の前では、ゲートを通ってヴェリック社の三人が帰還するところであった。
一旦ゲートが閉じるのを待って、俺とモリタとおまけのレヴンは三人が帰還したのと同じ場所に立つ。
「それでは頼む」
俺はモリタに言った。
するとモリタはすでに帰還用に使うための端末を取り出していた。
異世界から端末を使うことで帰還することが出来るのだ。もちろんだが、そのためには税関による承認を受ける必要があった。
出国時と同じ人間がそのまま帰ってくるならすぐに承認が降りるのだが、さすがに増えている場合だとすんなりとは許可が降りない。当然の話であった。