第06話 異世界ウォーズ 後編 - 34 - 持ち帰り
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 34 - 持ち帰り
今のヴェリック社の立場としては、それ意外にないと思われる答えである。
これから先は、もう直接リヴォーク社がでてくる以外に交渉を続けることはできない。さすがにそのことは理解できたようである。
「おや? 兵器の売り込みにこられたのではないのですか? その資料は今後の取引に影響が出る可能性がありましたので、あくまで参考資料的な意味合いでお渡ししたものですですが。なにか問題でもありましたでしょうか?」
俺は相手の反応にまったく気付かないふりをしながら、わざとらしく尋ねる。俺が資料を配っておきながら、何いってんのっていう話だ。だが、さすがにヴェリック社の人間もそんな安い挑発に乗ってこなかった。
「ですから、新兵器のご提案も含めまして持ち帰らせていただきたいと、そういうことでして」
何も決めないことを決めた的な、当たり障りのない答えが返ってくる。
さすがにこれ以上何を言ったところで、似たような回答が返ってくるだけだろう。
だが、俺にとっての本題はここからだ。
「いえいえ、それには及びませんよ。これまで何度も足を運んでいただいたので、これ以上は申し訳ありません。近いうちにこちらの方から出向きますので、場所を教えていただくだけで結構です」
俺の提案に、ヴェリック社の三人はまた固まった。おそらくこれまで色んな異世界に兵器を売り込んで来た経験があるのだろう。だが、こんなことを言い出すやつはいなかったに違いない。
硬直が溶けた後、三人はヒソヒソと相談を始める。
だが、いっこうに決まらないらしく終わらない。
それも無理はない。いったん持ち帰ってと言いたいところだが、会社に直接行っちゃうよと言われたのだ。そもそもヴェリック社には決定権はなく、リヴォーク社の判断を仰ぐ必要がある。ヴェリック社に来られても、結局何も出来ない。
持ち帰ることも出来ず、かと言ってヴェリック社に来られても困る。ようするに、二律背反が成立してしまっているのだ。
もちろん二律背反に陥っているのは、彼ら自身の都合によるものだ。ヴェリック社ばかりに都合の良い条件を探っていれば自ずとそうなる。こうなることを見越して俺が意図的にやったことであるが、実はもう一つ不確定要素に期待してもいる。
そして、不確定要素はもう限界に達していた。
むしろ、今まで黙っていられたほうが奇跡的なことである。