第06話 異世界ウォーズ 後編 - 33 - 採掘権
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 33 - 採掘権
「これまで我々魔王府としましては、広大に広がる魔鉱石の埋蔵地帯を不毛地帯と呼びまったく管理しておりませんでした。ところが最近になって、正体不明の盗掘者が出没するようになり、近隣の魔物が被害を受ける事案が起こるようになっております。そこで魔王府は魔王ゼグルスの威光も鑑み、対応策を検討いたしまして魔王府との共同出資による採掘会社の設立を提案することが決定されました。そのさい、パートナーとなる会社の選定は公開による応募でおこないます。企画書をご提出いただいた上で書類選考を行い、残った企業と魔王府の間で細かい条件交渉を行った上で最終的な選定をするという流れになります。その当たりは詳しく書いてありますので、もし興味があるようならご検討されてはいかがでしょうか?」
俺は笑顔を絶やすことなく簡単な説明を終えた。
その説明を聞いている間中、ヴェリック社の人間は苦しそうに唸り声を上げるだけで身じろぎ一つできずに固まっていた。
俺が説明を終えても、しばらくそのままなにも反応を見せなかった。
もっともそれは反応を見せないのではなく、反応できなくなっていたのだろうが。
言いたくても言えないのだ。あくまで彼らは武器商人であり、兵器の売り込みに来たのだという建前を取り続ける限り、魔鉱石採掘における話には深入りすることができない。また、そういうことのできる立場でもなかった。ただし、本社であるリヴォーク社の最終目標が採掘権の独占にあるということは言い渡されているはずだ。
俺の読みでは、兵器を売り込んで多額の支払いを要求。もちろん支払いができないことを見越した上でだ。その資金を準備するお手伝いをするとかなんとか理屈をつけて、本社であるリヴォーク社を紹介する。ここでリヴォーク社が乗り出して来て、魔鉱石採掘の独占権を取りに来る。おそらくそんな展開を考えていたのだろう。彼らのこれまでの反応が俺の読みを裏付けていた。
だが、今更そんなことを考えたところで意味はない。
たった今魔界府――実態は俺だが――が提出した書面によって、すべては吹き飛んだ。今までとは別のステージへと移行したのである。
すでに彼らが立てていた計画は過去のものとなった。
「誠に申し訳ありませんが、一旦持ち帰らせていただけないでしょうか? できるだけ早い時期にもう一度出直してまいりますので」
固まった状態から復帰したゲンノが、ようやく口にした言葉がそれだった。