第06話 異世界ウォーズ 後編 - 30 - 交渉開始
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 30 - 交渉開始
俺とモリタとレヴンの三人は、魔王城の正面門前に立ち、その時を待っている。
時刻通りにルートワースからのゲートが開いた。ゲートから出てきたのは男二人と女一人。男二人は前回も見たことのあるヴェリック社の人間で、女は今回始めて見る顔だった。
美人ではあるが可愛げはなく、かなり硬い感じのする女である。
「お待ちしてました」
俺は頭を下げずにまずは出迎えの言葉を口にする。
男二人は、まさか予め待ち構えているとは思っていなかったらしく、若干狼狽したような表情を見せたが女の表情にはまるで変化が見えなかった。
「こ、これはわざわざお出迎えありがとうございます」
片方の男が型通りの挨拶をしてきた。
「早速ではありますが、こちらにどうぞ」
俺はそれだけを相手に伝えて歩き始める。
向かうのは交渉用に用意した、大きなテーブルが置いてある部屋だ。
中に入ると、すでにレヴンが席に付いていた。俺が指示したのだから当たり前だが、当たり前のことができるかどうかはまた別な話しだ。
「それでは、そちらの席にどうぞ」
俺はレヴンが座っている対面に当たる席にヴェリック社の三人を案内した。その席には三人分の書面が揃えて置いてある。徹夜をしてモリタと二人で作成したものだ。
俺とモリタはレヴンを挟んで両側の席に座る。
ヴェリック社の三人が席についた所で俺から話し始める。
「それでは初めましてになりますが、自分は魔王ゼグルスより交渉の全権を任されましたナルセと申します。そして隣に座っているのが、魔王ゼグルスの代わりに立会人として同席いたします、魔王ゼグルスの娘レヴン。さらにその隣に座っているのは、今回から交渉に参加することになったリベン法律事務所のモリタです。これからは、この三人が窓口となり交渉を行っていくことになりますので、以後よろしくお願いします」
俺は笑顔で紹介していく。こういった交渉の場では余裕を見せておいて損はない。
「レヴンです、よろしく」
不機嫌さを露わにしてレヴンが自己紹介する。まぁ、言いたいことは色々あるが、贅沢を言ったところでしかたない。いるだけマシだろう。
「私、リベン法律事務所のモリタと申します。法律面からのアドバイザーとして参加させていただくことになりました。よろしくお願いします」
軽く頭を下げるモリタも笑顔での対応だ。
ここら当たりの対応はそつがない。企業法務を専門にやってきただけのことはある。