第06話 異世界ウォーズ 後編 - 28 - 計画
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 28 - 計画
返事がどうなるかを知っていながら俺はあえて訪ねる。
「もちろんですとも。報酬のこともありますが、私は今までにないくらい興奮しています。国家規模の陰謀に法律家として関わることができるなんて思わなかった。相手にとって不足はありません、全力以上の力を尽くして戦いましょう」
興奮したような声でモリタが言った。やはり法律家と言ってもしょせん男は男なのだ。金のためだけで戦えるはずがない。
「それでは時間がない。さっそく始めるか」
俺主導でモリタと一緒に計画を練り始めた。
それから六時間後、どうにか計画を練り上げて準備書面の作成にまでこぎつけた。
そのおかげで、俺は基礎的な法知識を身につけることができた。それと、モリタのいる世界はルートワースと呼ばれていることも分かった。
惑星だけでなく、二つある月の一つにもコロニーが作られているということであった。
ただ、居住している人間は極少数で、豊富に存在している魔鉱石の採掘がその目的らしい。
ちなみに惑星上にある魔鉱石はほぼ採掘が完了しており、現在は月からの採掘と異世界での採掘に頼っている状態ということであった。
いずれにしても、魔法技術のレベルは惑星規模に達しており、地球における科学技術のレベルと同等かそれより若干上だと判断できる。
ただエネルギー資源が枯渇気味で、その点では地球の方が恵まれている。
当然文明も地球のそれとほぼ等しい感じで、先進国のそれと極めて酷似している。
高度に発達した魔法は、科学と見分けがつかなくなる。地球とルートワースはその良い見本のようなものであった。
とうぜんながら、民主化の流れとそれに伴う法整備も酷似しており、説明を受けた法律に違和感のようなものはあまり感じなかった。
ただ裁判制度に関しては、日本のそれではなくアメリカの陪審員制度に近い。有罪か無罪の判決を下すのは任意に選ばれた陪審員達であり、弁護士は裁判官ではなく陪審員に対して訴えかけることで勝利を得ることになる。
もっとも、今回はそこまでいくことはないので参考的に知っておけばよい話である。
ただし、交渉をすすめる上でそう言った知識がないようでは話にならないのも事実であった。
それと、もうひとつ俺にはやるべきことがあった。
ヴェリック社が乗り込んでくる前にである。もちろんモリタと一緒に練り上げた計画であった。