第06話 異世界ウォーズ 後編 - 26 - 説明
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 26 - 説明
「心配することはない。まだ具体的な話しはでていないし、書面になった契約は何一つとして存在しない。すべてはこれからだ。異世界だということで高をくくっているようだからな。次の交渉はおそらくチャンスだ。そのことを踏まえて準備書面を作ってくれ」
俺は焚き付けるように言った。もちろん嘘は言っていないし、そもそも当初の予定では俺が同じことをやるつもりだったのだ。
もちろんまともな知識などないので、ハッタリと詐欺で切り抜けるつもりだったが。
専門家がいるのなら、そんなことをせずとも正面から戦ったほうがいいに決まっている。
俺は魔王ゼグルスの執務室にモリタを案内すると、すぐに魔界マドゥフが置かれている現在の状況をできるだけわかりやすく説明する。
もちろん俺が前回やったハッタリもだ。
俺は床の上の適当な場所にレヴンを転がすと、ヴェリック社の社員に見せたハリボテを見せて説明する。おそらく大丈夫だとは思うが、なんらかの違法性がある可能性があるからだ。一旦は専門家の判断を仰いでおく必要があった。
「なるほど、たしかにコアが存在しませんね。これなら彼らが騙されたと気づいても、法的な違法性には問えないでしょう。普通こういった兵器の権利はコアにつけます。そうしないと、現場レベルでのメンテナンスが困難になるからです。ヴェリック社の人間がどんな勘違いをしたにしても、コアを確認しなかったのは迂闊でした。こちら側としてはそれで助かりましたが。いずれにしても、このことが法的に問題になることは考慮する必要はないでしょう。問題なのは現在戦争状態にある敵国との関係でしょうね。おそらく敵国との接触はヴェリック社以外の会社がやっている。同じ会社だと利益相反になり違法行為です。たとえヴェリック社が本体であるリヴォーク社と繋がっているのだとしても、それを証明することができなければ交渉のための武器には使えません。逆に言えば証明することができれば、取引材料の一つとして使えるはずです。ただし、決定打とはならないでしょうが」
俺の報告を受けたモリタが法律の専門家としての意見を述べる。
「いざとなったら、リヴォーク社はヴェリック社を切り捨てて終わる。そのための子会社でもあるわけだしな。やはり、ヴェリック社といくら交渉しても話しにならん。なんとしてでもリヴォーク社を直接引っ張りだすしかないか」
俺はモリタの後を引き継ぐ形で話を続ける。
「それは私も考えていました。何か手はあるんですか?」