第06話 異世界ウォーズ 後編 - 25 - 準備書面
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 25 - 準備書面
「後のことはすべてナルセに任せてある。ナルセの下でしっかり働くがよい。では、下がっていいぞ」
ほぼ丸投げだった。まぁ、分かっていたことだから良いとしても、もう少し遠慮をするなり何らかのリアクションは欲しかったところだ。
もっとも、そんなことに関わっている余裕はなかったが。
今にも噴火しそうな顔をしているレヴンの背後から首に左腕をかけてぎゅっと抱きしめて、口を開けないように右手で塞いでやる。スリーパーホールドの変形技のように見えるのは、たぶん気の所為だ。
失神したレヴンをお姫様抱っこで担ぎ上げると、俺はモリタと一緒に謁見の間を退出する。
お姫様をお姫様抱っこしているというのは、一周回って案外斬新かも知れないと思いながら、モリタに話しかける。
「よかったな、とんでもないお宝を貰えそうじゃないか」
必死で堪らえようとして堪えきれないで、若干気持ち悪い感じになっている笑みを浮かべたモリタは俺に顔を向けてきた。
「いやぁ、お人が悪い。まさか魔界のお姫様の婿殿だなんて、思いませんでしたよ。おっしゃってくださったらよかったのに」
気持ちの悪いニコニコ顔を向けてそんなことを言ってきた。
「俺は婿ではないし、結婚してもいない。それより、正式に俺の下で働いてもらうからには、実績を残してもらう必要がある。とりあえずこの後数時間後に、ヴェリック社の人間がやってくる。その時にはかならずリヴォーク社が用意した弁護士を連れてくるだろう。その時こちらはディベートを提案しようと考えている。つまり、そのディベートに間に合わすように準備書面を用意してくれ」
俺はざっくばらんに今後のことを指示する。
すでにモリタ弁護士はお宝に目がくらんでいるので、今更手を引くことはないだろう。もちろん、これから先俺の部下として働いてもらうわけだから、あまり形式張ったことをしたくなかった。
ちなみに俺は魔王の執務室に向かって歩いている。魔王城の中で唯一と言っていい、魔界の資料が揃っている場所がそこだった。
「ですが、いきなり言われましても。これまでの交渉の経緯というものすら私はわかっておりませんので」
さっそく反駁するような言葉をモリタが口にする。ただそれは、最もな意見にすぎない。もちろん俺も話す必要があったことなので手間が省けて助かる。